1. ホーム
  2. モノを楽しむ
  3. モノ好き人
  4. “DIY育”のこと ~親も子どもも成長できる!モノ作りの素晴らしさ~

“DIY育”のこと ~親も子どもも成長できる!モノ作りの素晴らしさ~

「Tちゃんちって、なんでも作るんだね~。楽しそう~!」わが家の庭のサイクルポートとスロープを見て、娘の友達がそう言った。“Tちゃん”というのは娘のこと。ちょうど近くにいて、その言葉を聞くと、思わず心の中でガッツポーズ!

建築士の友人がいて、マイホーム新築のお祝いとして、庭にブランコを作ってくれた。太めの木材で骨組みをしっかりと作り、大人が思いっきり揺らしても、びくともしない頑丈さ。ちゃんと安全を考えて作ってくれたそのブランコは、「さすがプロ!」と納得の立派な代物で、娘たちは小学校を卒業するまで、よく遊んだものだ。

自分自身はと言うと、「趣味です」と人に自慢できるほど、とりたててDIYに凝っているわけではない。得意でもないし、それほど器用でもない。ただ、自分の家の庭というのはうれしいもので、いろいろと利用してみたくなる。

それまでにも、家族での庭バーベキューは、ちょくちょくやっていて、妻はキッチンで食材を切ったり下準備、自分は日除けのタープを張ったり、炭で火起こししたりと庭での準備。娘たちも、テーブルやイスを運んだり、食材を運んだり、火起こしを手伝ったり。家族みんなで何かひとつのことをやるのは楽しく、バーベキューなら、準備の後に美味しい料理も待っている。それだけに、娘たちもわくわくしながら準備を手伝ってくれた。

「庭で何かしたい」「家族みんなで何かをやるのって楽しい」。その気持ちから、今度は少しDIYっぽいことをしてみようと、まずやったのがエアコンの室外機カバーと、庭に置いてあったベンチのペンキ塗り。どちらもホームセンターで購入した既製品なので、塗るだけ。とはいえ、色ムラなく、板と板の継ぎ目部分までキレイに塗ることにこだわり、娘たちもがんばって、キレイに仕上げることができた。その頃から、徐々に、のこぎりで板を切る、かなづちで釘を打つことにも興味を持ち始めていた。

設計して、土を掘って、コンクリで埋めて…まるで、ファミリー工務店!?

そのうち娘たちがマイ自転車を持つようになり、自転車のサイズも大きくなって、それまで置いていた玄関ポーチでは入りきらなくなったことが理由で、わが家にもサイクルポートが必要に。アルミのフレームにビニールシートで囲まれたものは比較的安価で見つかったが、台風が来ても安心できるちゃんとしたものにしようと思うと、うちは5人家族で5台分のスペースが必要。やや大きめになるため、市販のモノだとポート代と工事費で安くても軽く10万円超え!「ひょっとして、自作したらもっと安く済む?」と思い、調べてみると、ちょうど良いものを発見。“イレクターパイプ”をフレームに使うサイクルポートである。“イレクターパイプ”は太さや長さが多彩に用意されていて、専用のジョイントも種類豊富。組み合わせ方によって、サイズも形も自由自在にできる。その上頑丈で、見た目もシンプルでかっこいい。「これだ!」と。

が、ここからが想像していた以上に大変だった。まずは設計図作り。幅&奥行き&高さを決め、そのサイズに合わせて、50cmを何本、20cmを何本、この形のジョイントを何個・・・と、すべて計算してパーツをオーダー。約1週間後、段ボール3箱分のパーツが届いた。「台風が来てもびくともしない」ポートを作るには、脚元を固定することが大事なので、今度はホームセンターで、脚となるコンクリートブロックと、その周囲を固めるための「水で固まるコンクリート」を購入。

さて、いよいよ作業開始。庭の土を掘り、穴を開けてそこにコンクリートを流し込むのだが、脚の位置に狂いがないよう慎重に距離を測って30cm以上の深さの穴を掘る。実はこれが一番の重労働で、家族総出で汗だくに。「つかれた~!」と言いながら、ちょっとずつさぼりながら、まる一日かけて4つの脚の穴を掘りきり、コンクリートを流し込むことができた。あまり長時間になると飽きてくるので、交代交代でやりながら、途中でアイスを食べたり、ジュースを飲んだり、気分転換もしながら。

コンクリートが乾くのに1週間待ち、いよいよフレームの組み立てにかかる。

組み立ては、順番を間違えないようにしさえすれば比較的容易で、木ねじ留めも、電動ドライバーで簡単にできた。娘たちも結構、楽しそうにやっていた。新しい道具を使うことが楽しくて、しかも、あっという間に木ねじを入れられるので、我先にやりたがったほど。

屋根は、ポリカーボネートの波板で、雨水を自然と下へと流せるようやや角度を付けた。床は土のままだと自転車を停める時に倒れやすくなってしまうので、コンクリート平板を敷きつめた。さらに、段差のある庭のポートから自転車を出し入れしやすくするためにスロープも作って、ようやく完成!

正直、あまり家計の役には立たないかも。でも、それ以上の価値が!

ちなみに、家族の労力の結晶となったサイクルポート作りにかかった費用は総額8万円弱。それほど節約はできなかったけれど、愛着はひとしおだ。以後、台風や大雨が来るたびに、気になって窓からサイクルポートの様子を見る日々がしばらく続いたが、頑丈なサイクルポートは雨風にまったく動じず、その堂々たる姿を見ながら「うん、うん」と得心。完成から5年近く経つが、未だにびくともせず、娘たちの自転車を守ってくれている。娘たちはと言うと、実はそれほど感動している様子はなく、それが壊れることなく存在していることが当たり前のようで、毎日、何食わぬ顔で自転車を出し入れしている…。

そんな娘たちだが、今では、段ボールでカプセルトイ・マシーンを作ってみたり、暇さえあれば絵を描いたり、市販のものと遜色ないぐらい見栄えも良く、美味しいケーキまで作れるように。創作活動があたり前のように、娘たちの生活の一部になっていて、そんな姿を見るのは、実に微笑ましい。

そうしてみるとDIYは、娘たちの“育”に多少なりとも、影響を与えられたのかもしれないと思う。同時に、自分自身も一緒に“育”ててもらったように思う。DIYが得意ではないけれど、「家族で一緒に作る喜び」を教えてもらえたのだから。

さて、家族には告げていないが、次は「ウッドデッキ」に挑戦してみようか? ただ娘たちは、もう中学生と高校生。部活も忙しそうだけど、はたして一緒に作ってくれるだろうか?