文字が“消える”とは、いったいどんな原理?
もし、子どもに「消しゴムで文字を消せるのは、どうして?」と聞かれたら、きちんと教えることができるだろうか?筆者は恥ずかしながら、教えられる自信は…なかった。だからこそ、「消せる」理由をちゃんと知ってみたくなった。そのために、まず、鉛筆で文字が書ける仕組みについてふれておこう。
鉛筆で紙に文字を書くと、一見すると紙に黒い文字が刻まれたように見える。
が、実はこれ、鉛筆の芯の黒鉛がただ紙にくっついているだけの状態。
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閉じるあって当たり前すぎて、その存在に疑問を持つことがなかった「消しゴム」。だが、よく考えると、文字が“消える”とは、いったいどんな原理なのだろう。いつ頃から、消しゴムはあるんだろう。その「?」について迫ってみた。
もし、子どもに「消しゴムで文字を消せるのは、どうして?」と聞かれたら、きちんと教えることができるだろうか?筆者は恥ずかしながら、教えられる自信は…なかった。だからこそ、「消せる」理由をちゃんと知ってみたくなった。そのために、まず、鉛筆で文字が書ける仕組みについてふれておこう。
鉛筆で紙に文字を書くと、一見すると紙に黒い文字が刻まれたように見える。
が、実はこれ、鉛筆の芯の黒鉛がただ紙にくっついているだけの状態。
紙の表面は滑らかに見えるが、肉眼では分からない繊細な凹凸がありデコボコしているため、鉛筆を走らせると黒鉛の細かい粒が紙の繊維のすき間についているのだ。
ちなみに、鉛筆の芯は黒い色を付ける「黒鉛」と、それを固める「粘土」で構成されていて、黒鉛と粘土の割合で鉛筆の「硬さ」「濃さ」が決まる。
黒鉛が多い芯=「濃く、柔らかい芯」
粘土が多い芯=「薄く、硬い芯」
という具合に。
鉛筆で紙に文字や絵を書くと黒くなる仕組みは「紙の表面の凸凹に鉛筆の黒鉛の粒が付着するから」。
なので…
消しゴムで書いた文字や絵を消せるのは「消しゴムが黒鉛の粒をこすり取っているから」という分かりやすい仕組みだ。
また、消しゴムは種類によって、鉛筆の黒鉛の粒の取り方が違うのも忘れてはいけない。消しゴムの種類は一般的に大きく分けて2種類。
消しゴムの元祖である「ゴム製のもの」と、現代で主流となっている「プラスチック製のもの」。
ゴム製のものは、紙の表面を黒の粒ごと少し削り取っているが、プラスチック製のものは、鉛筆の粒を包み込むようにして取っているそうだ。そしてこの「プラスチック製のもの」が、日本生まれというところにも注目したい。
が、まずは消しゴムの歴史を紐解いていこう。
消しゴムの誕生は、鉛筆が生まれた約200年後。16世紀に黒鉛が発掘され、鉛筆として使用されることになった。
が、鉛筆が発明されたものの、書いた文字を消す方法がすぐに見つかったわけではなく、もちろん「消しゴム」も存在していない。
鉛筆が生まれてから約200年間「消しゴム」のない時代が続き、1770年、イギリスの化学者ジョセフ・プリ-スト-リ-が天然ゴムを使えば鉛筆の文字が消えることを発見した。これが、消しゴムの起源。
そしてその2年後の1772年、イギリスで消しゴムが売られるようになり、イギリスからフランスへ、さらに全ヨーロッパ、全世界へと広まっていったそうだ。
では、鉛筆はあったが「消しゴム」が無かった時代、人々は一体どうやって文字を消していたのだろうと思ったら…驚くなかれ、なんと「パン」で鉛筆の文字を消していたのだ。
しかし、パンなら何でもいいわけではない。菓子パンやおかずパンではNGだ。
消しゴムの役目を果たすパンは、何の加工もされていない「食パン」。これを「消しパン」と呼んでいた。食パンの内側の白い部分を摘んで、丸めて消していたのだ。
ちなみに「食パン」という名前。なぜ、わざわざ食べるものなのに「食」という文字が付いているのか不思議に思ったことはないだろうか?
その名前になった一説に、この「消しパン」と区別しているという説があるというから納得だ。
今でも、絵画の木炭デッサンをするときには、消しゴムでは固すぎて用紙がいたむため、パンが消しゴムとして使われている。
日本に消しゴムがやってきたのは明治時代。もちろん、このときやってきたのは「天然ゴムの消しゴム」だ。
ちょうどこの頃、義務教育制度が実施され、鉛筆や消しゴムが数多く必要となり、文具の輸入が高まったことが背景にあるそう。
明治19年、ゴムの会社が消しゴムに近いものを作ったのが最初の日本製消しゴムと言われている。
ただ、天然ゴムは輸入に頼っていたため、安定した生産ができるよう天然ゴムに代わる材質の消しゴムの開発が進められていた。
そんな時、とある町工場で塩化ビニールを研究していた技術者が、消しゴムが見当たらず、そばにあった塩化ビニールの切れはじを代わりに使ってみたそう。すると偶然にも、それが天然ゴムの消しゴムよりもよく消えることを発見。
その話を聞いたさまざまな会社が、塩化ビニールで消しゴムを作る研究を重ねていくことに。そして、1959年シードゴム工業(現・株式会社シード)が世界で初めて「プラスチック消しゴム」を開発。
その後、プラスチック消しゴムの威力は瞬く間に世界中を席巻し、今でも主流となっている。身近な存在のプラスチック消しゴムに、実は日本の技術がつまっていたとは!
最近では、SNSで話題となった消しゴムの向こうに字が見えるくらいに透明な消しゴム「クリアレーダー」が登場するなど、消しゴムの進化はままだ止まらないようだ。