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✏️ 第一回:鉛筆の歴史と世界の名門たち

──「削る」ことから始まる、文房具の原点探訪

◆ 鉛筆って、なんでこんなにいいんだろう?

なんでこんなに心惹かれるのか、自分でもよくわからないけど、鉛筆って、いいよね。

芯を削って、木と黒鉛の香りに包まれ、紙の上に黒い線を走らせる。
書くことの原点って、ここにある気がします。

ボールペンやシャープペンが主流になった今でも、鉛筆がなくならないのはなぜなのか。
それは鉛筆が、ただの筆記具ではなく、「書くこと」そのものを語ってくれる存在だからかもしれません。


◆ 鉛筆のはじまりは16世紀のイングランド

鉛筆のルーツは、16世紀のイングランド(エリザベス1世が有名なテューダー朝の時代)。
ある日、とても純度の高い黒鉛(グラファイト)の鉱脈が発見され、それを木の棒ではさんだのが、鉛筆の始まりです。

当時は黒鉛を鉛(lead)と勘違いしていたため、今でも英語で鉛筆の芯を “lead” と呼ぶ名残が残っています。

その後、18世紀には黒鉛に粘土を混ぜて焼くという芯製造法がフランスで確立され、ドイツでは本格的な鉛筆産業が立ち上がりました。
鉛筆は、ヨーロッパから世界へと広がっていきます。


◆ 鉛筆界の紳士録

世界を代表する5つの名門メーカー

文房具が好きなら一度は聞いたことがあるはず。
鉛筆の歴史を語るときに欠かせない、世界の名門たちをご紹介します。


🎩 ファーバーカステル(Faber-Castell)

  • 創業年:1761年(ドイツ)

  • 代表製品:CASTELL 9000、パーフェクトペンシル

  • 特徴:世界最古の鉛筆メーカー。六角軸の定着者。

  • 魅力:デザインと実用性の両立、そして貴族的な風格。


🎩 ステッドラー(STAEDTLER)

  • 創業年:1835年(ドイツ)

  • 代表製品:Mars Lumograph(マルス ルモグラフ)

  • 特徴:製図やデッサン用途に特化。硬度規格にも貢献。

  • 魅力:理系派のプロフェッショナル文具。


🎩 カランダッシュ(Caran d’Ache)

  • 創業年:1915年(スイス)

  • 代表製品:Grafwood、Technograph(廃番)

  • 特徴:高級感と美しさを兼ね備えた鉛筆づくり。

  • 魅力:もはやジュエリーのような一本。


🎩 三菱鉛筆(Mitsubishi Pencil)

  • 創業年:1887年(日本)

  • 代表製品:Hi-uni、9800

  • 特徴:「uni」ブランドで黒鉛のなめらかさを追求。

  • 魅力:濃く、深く、美しく。日本製鉛筆の王道。


🎩 トンボ鉛筆(Tombow)

  • 創業年:1913年(日本)

  • 代表製品:MONO 100、赤青鉛筆

  • 特徴:洗練されたデザインと抜群の使い心地。

  • 魅力:安定した品質が魅力。そしてMONO100の滑らかさは格別。


◆ 鉛筆五傑の比較表

メーカー

創業年

本拠地

代表製品

魅力

ファーバー

1761年

ドイツ

CASTELL 9000

世界最古、貴族の風格

ステッドラー

1835年

ドイツ

Mars Lumograph

製図・デッサンに強い

カランダッシュ

1915年

スイス

Grafwood

高級志向、色も質感も美

三菱鉛筆

1887年

日本

Hi-uni

濃くてなめらか、万能型

トンボ鉛筆

1913年

日本

MONO 100

デザインと機能の両立


◆ 日本で鉛筆文化が定着したワケ

鉛筆は、明治時代に文明開化の象徴として日本に輸入されました。
初めは高級舶来品でしたが、やがて三菱鉛筆やトンボ鉛筆といった国産ブランドが登場し、誰もが手にできる存在になります。

戦後の教育現場では、「安価・安全・修正可能」の三拍子揃った鉛筆が重宝されました。
ランドセルの中に、削りたての鉛筆が何本か入っている──
そんなシーンは、昔と変わらなくて、そして安心するものです。


◆ おわりに:鉛筆を削る時間は、心を整える時間

鉛筆は、ただの筆記具じゃない。
削って、握って、紙に走らせて、また削って……書くことをプロセスでも体現する道具です。

次回は、「なぜ小学生はいまだに鉛筆指定なのか?」を深掘りしてみたいと思います。
学校指定の裏にある、鉛筆ならではの良さ──あなたも一緒に探ってみませんか?


✨【次回予告】

第二回:「 なぜ小学生は鉛筆なのか?──文房具店員が考えてみた」

  • 鉛筆の前に「紙」があった
  • 教育現場に鉛筆が根付いたワケ
  • 鉛筆が小学生にぴったりな理由