私は普段文具店の仕事をしています。もっとも頻繁に扱っている革製品は手帳や名刺入れです。
これら製品を販売する際に最も聞かれる質問はこの2つ。
- 「そもそも本革と合皮の違いとは何?」
- 「革の値段は何で決まっている?」
本革
動物の皮膚は「鞣し(なめし)」という工程を経て「革」へ生まれ変わります。
合皮との一番の違いは「耐久性」です。適切なお世話をしていれば、なんと10年以上使用できると言われています。
そして、動物の皮膚が原材料ですので全く同じものはありません。ここが品質として不安定ととるか一点物ととるかは意見の分かれるところです。
合皮(合成皮革)
布などの繊維をポリウレタンなど合成素材で塗り固めたものです。水分をはじくため、天候に左右されず利用できるのが最大の利点です。
そして安価なため、本革に代わり多くの製品素材として利用されています。
デメリットは、耐久性の低さです。保管コンディションによっては表面が剥がれてきたり、加水分解を起こす場合があります。
もちろん人工物ですので、品質に差異は殆どありません。
㊙本革と合皮見分け方!
匂いを嗅ぐ、折り曲げてみる、擦る、引っ張るなど様々な方法が広まっています。
しかしまだ購入していない商品を折ったりするのを、ショップ店員さんの前で実行するのは少々困難です。表面の毛穴などを見ればわかるよという技術をもっている方もいらっしゃるのですが、最近の合皮はよくできていて素人には難しい判断方法です。
簡単に見分ける方法は品質表示タグやラベルを見ることです。品目により表示規定が異なりますが、国内で販売するには主たる成分の表示義務がありますので非常に精度の高い見分け方ですよ!
革の値段
本革は合皮に比べて高価ですが、その本革のなかでも価格差が大きい!
これが長年革製手帳を販売してきて私が感じたことです。この差異は何でしょうか。
とても大雑把におはなしすると、革のな鞣し方と動物の種類によって価格差が発生します。
鞣し方
有名なお話ですが、皮の鞣しには大きく分けて2種類あります。タンニン鞣しとクロム鞣しです。
◎タンニン鞣し
植物から抽出したタンニン溶液に漬け込んで鞣す方法です。中でもピット槽鞣しはタンニンに浸け込む期間が30日と非常に長いです。
時間のコスト以外にもピット槽には大量の高価なタンニンパウダーが溶かれており非常に贅沢な鞣し方です。
硬くて丈夫な仕上がりが特徴です。経年変化が大きくでる種類で、お世話の仕方により非常に美しい革へと成長します。
◎クロム鞣し
こちらは3価クロムという物質を使って鞣します。
※有毒な6価クロムと混同されている場合がありますが、3価クロム自体は無毒ですのでご安心ください
1日で大量の革をなめすことが出来るのが特徴です。タンニン鞣しにくらべとても柔らかい仕上がり。
生物の種類
日本で革製品というとほぼ牛を指しますが、他にも馬、鹿、豚、ダチョウ、ワニ、エイなど稀少な動物の革製品も存在します。
牛のように表面積が大きく生産量の多いものにくらべ、原皮の調達が困難で表面積が小さい生物は当然価格が高くなります。
また同じ牛でも、月齢や部位によっても価格に差がうまれます。
閑話休題、僕らが革を大事にしたくなる理由
なぜか革製品を大事にしてしまう理由。私個人のとても庶民的な理由をいうと、やっぱり価格なのです。
もう少しロマンチックな言い方をすると「ちょっと無理をして買ったものへの思い入れ」です。
そして、前述の通り革は長生きですから「できれば大事に長く美しく使いたい」という気持ちにさせているように感じるのです。
さて、今回ご縁があってタンナー(革を鞣す工場)様の見学許可を頂きました。
兵庫県は姫路市、その企業の御名前は「株式会社山陽」様。
次回は工場見学をレポートいたします。