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革の工場見学

革についての知見を深めるべく、兵庫県姫路市に工場を構える株式会社山陽さんにお邪魔してきました。 「革」についての深掘り第3回は、工場見学行ってきたの巻きです。 普段入ることのない場所への潜入はわくわくしますね。

 

山陽さんは原皮の仕入れから鞣し、加工、仕上げまで自社工場で行っています。

今回は革の原皮が出荷される姿になるまでを見学させていただいたので、革ができるまでを簡単に紹介します。

さっそく原皮を保管している倉庫へ。

原皮は防腐のために塩漬けされ10度℃以下で保管されています。

原皮の姿を目にするのは初めての経験でしたが、独特な香りと見た目から生きていた姿が想像できる形が印象的でした。

 

皮を鞣すまでに、原皮に様々な手を加えていきます。

まずは塩漬けされ水分の抜けた原皮を大きな洗濯機のようなミキサードラムに投入、水分補給と原皮の洗浄を行います。

さらに裏面の皮下組織を削り落とし、表面の毛をアルカリで溶かし、加工に不要な部分を取り除きます。

 

次に皮の厚みを整えます。

皮を外側(毛のついていた側)と内側(お肉についていた側)の2枚に分けます。

革小物に使われているのは主に外側ですが、内側も毛足の長い革(ベロアなど)に加工されたり、コラーゲン・ゼラチン・タンパク質の原料として使用されます。

捨てる部分は無く、余すところなくリサイクルされていきます。

 

さて、ここからが鞣しです。

山陽さんではクロム鞣し、タンニン鞣しの2種類を同じ工場内で行っています。

鞣し方は革製品情報として公開されていることも多いので、私たちの目に入ることも多い言葉ですね。

それぞれの鞣し方の特徴などは第2回「革の基礎知識」で紹介しています。

山陽さんではピット槽でタンニン鞣しを行っています。

ピット槽の深さは3メートル、皮を付けている溶液は秘伝のタレのように継ぎ足しで使用され続けています。

1ヶ月ピット槽に浸かっていた革は、約1週間かけて乾燥します。

ここまで聞くと、タンニン鞣しは手間暇かけられていることがよく分かります。

ピット槽鞣しにこだわる理由の一つは、しっかりした分厚い革を作ることができるからです。

分厚く頑丈で伸びにくい革は、一枚物のベルトや鞄のストラップに適しています。

 

 

クロム鞣しはタイコと呼ばれる大きな樽を使用して加工します。

タンニン鞣しと違って、鞣す期間は1日、乾くとシワがよってしまうので乾燥は厳禁です。

出回っている革の約8割はクロム鞣しだそうです。

※クロム鞣しに使う薬剤の影響で革は薄い青色に仕上がります。

ここまでが皮が革になる行程でした。

 

 

山陽さんでは、ここからお客様の求める触感・色に加工していきます。

まずは染色。染色もタイコで行います。

染色した革は乾燥課程に入ります。乾燥方法は商品に合わせて変わります。

染色して乾燥した革の表面には毛穴が見えます。毛穴を残した表面の革を「銀付き」、

表面をサンドペーパーで擦り毛穴を潰した革を「銀擦り」と呼びます。

ここから仕上げです。

銀擦りの革は表面に塗料で仕上げるのが一般的です。

ガラスレザーと呼ばれ、身近なものだとランドセル、ローファーの革などがガラスレザーです。

銀付の革に対しては、スプレーで塗料をうすーく散布し革らしい革を作ります。

塗装作業は1回では終わらず、3〜4回繰り返します。

 

塗装の一番の目的は、革をキレイに見せることです。

多少の切り傷、掠り傷は削って塗装することで隠すことができます。

また、革は生き物なのでそのままの状態では部位によって色ムラが発生しています。

その色ムラもキレイに塗装することで、その後の加工がしやすくなります。

 

しかし、キレイに見せるよう加工を行うと均一性は出ますが、表面が樹脂っぽくなっていきます。

革らしさとは離れていくので、お客様の求めるものに合わせて仕上げていくことが大切です。

 

 

盛りだくさんの工場見学はいかがでしょうか。

今回は行程をメインにお話しましたが、中でも魅力的に感じたのは「余すところなくリサイクルする」ところです。

革として使えない部分は、私たちの知らないところで別の目的に使用されていますし、

そもそも原皮ってどうやって手に入れているのか?これも実はリサイクルの一環だったりします。

次回は「無駄にしない革のリユース」をテーマにお話していきます。