1.自由な写真の国へ
オールドレンズで撮るようになってしばらくして、「他の人の写真も見てみたい」「自分の写真も誰かに見てほしい」
そんな気持ちが生まれた。
当時、日本の写真界隈では「ガンレフ」というSNSが主流だったけれど、私はあえて海外で流行していた flickr(フリッカー) を選んだ。
そこには日本的な“お行儀の良い写真”とは違う世界が広がっていた。
構図も色も自由。
「正解」なんて存在しない。
ただ“撮りたいものを撮る”という純粋な熱に満ちていた。
2.Awesome pic!──心の握手
flickrでは、海外のフォトグラファーたちと作品を見せ合い、♡やコメントを送り合った。
「Awesome pic!」──
たった一言のコメントが、まるで心の握手のようだった。
彼らはアドバイスを軽やかにくれ、気に入るとオーバーなほどの言葉で褒めてくれた。
その明るさに、最初は少し照れたけれど、やがてその文化が心地よくなっていった。
flickrでは、オールドレンズ愛好家も多かった。
「どのレンズで撮ったのか」をタグで共有し、描写やボケの違いを語り合う。
毎日コメントを読むのが、本当に楽しみだった。
3.Estherという光
そんな中で出会ったのが、ドイツ人のフォトグラファー Esther(エスター)。
彼女は、とびきり写真がうまかった。
構図、色、そして光の扱い。
どれもが完成されていて、見るたびに心が震えた。
いいね!やコメントを送るうちに親しくなり、やがてFacebookでもつながった。
英語でのやり取りは拙かったけれど、不思議と心は通じていた気がする。
4.消えたアカウント、残った光
しかし、ある日突然、彼女のすべての写真が消えた。
Facebookにもログインしなくなり、彼女のWEBサイトもなくなっていた。
まるで、最初から存在しなかったかのように。
けれど、私は覚えている。彼女は確かにそこにいた。
そして、私に“光の見方”を教えてくれた。
SNSという仮想の世界から彼女の痕跡は消えたけれど、写真を撮るたびに、私は彼女のきれいな目を思い出す。
あとがき
もし、いつかまた再会できたなら──
写真のことを、そして Super Furry Animals のこと、たくさん話したい。
音楽と写真の話で夜が更けていく、あの頃のように。
📖 次回:第四回「今もカメラとともに──光を信じること」へ続きます。

