1.最初の出会いはオリンパスの本の中に
オールドレンズという存在を初めて知ったのは、
会社の備品として購入したオリンパスのフォーサーズ一眼レフの解説本を読んだときだった。
そこには、ライカのレンズを取り付けて撮影した写真が掲載されていた。
その一枚を見た瞬間、息をのんだ。
普段、自分が撮っていた商品写真は照明をビカビカに焚き、影を消し、色を正確に出すことが目的だった。
けれど、その本に載っていた写真はまるで別世界。
自然光のやさしい陰影、肉眼で見ているようなリアリティ、そして被写体そのものの「存在感」。
どれも「良い写真」としか言いようがなかった。
2.M42という名の入り口
それから何年も時が過ぎて、手にしたPENTAXのカメラでもオールドレンズを使えることを知った。
中でも私が特に惹かれたのが「M42マウント」だ。
金属製のアダプターを通して、何十年も前のレンズが現代のカメラに装着できる。
その感覚はまるで、時代を超えて“手紙を受け取る”ようだった。
3.ebayで夜を待つ日々
当時は中古のオールドレンズが豊富で、しかも手に届く価格だった。私は毎晩のようにebayを覗き、
古いレンズの“気配”を探すのが日課になった。
手に入れたのは、たとえばこんなメーカーたちだ。
- Meyer-Optik
- Zeiss
- Voigtländer APO-Lanthar 180mm
- Voigtländer Septon 50mm F2
どれも時代も国も異なるが、ひとつひとつに個性があった。
フォーカスも、ISOも、シャッタースピードも、すべて自分の手で設定しなければならない。
失敗の山を築いたけれど、その分だけ“カメラがどうやって像を結ぶのか”が身体でわかっていった。
そして何よりも──「撮っている」ことを強く実感できた。
4.星形のボケに恋をした
なかでもとびきり気に入っていたのが「VOLNA-9」というレンズ。
このレンズには、絞り羽根の形が星形になるというユニークな構造があり、絞りを小さくすると、写真の中の光の粒が星の形にぼける。
まるで夜空の破片を閉じ込めたような写真が撮れるのだ。
(※Industarという星形ボケのレンズも存在していたと思う。)
撮影条件によっては、レンズのコーティングが弱く、光が白く滲んでしまうこともあった。
でも、その“予期せぬ効果”がまた面白かった。
欠点ではなく、個性として愛おしく感じた。

5.孤独と高揚のあいだで
もっとレンズを知りたい、もっと写真を撮りたい。
そんな思いが強くなるほど、孤独も深まっていった。カメラを構え、ファインダーを覗き、静かな風景に一人きり。
でも、心のどこかで感じていた。この世界のどこかに、同じように夢中で撮っている人たちがいる。
──そして本当に、その通りだった。
まもなく私は、世界中の写真仲間と出会うことになる。
次回:第三回「flickrで出会った世界──写真がつないだ国境のない友情」へ続きます。


