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第一回:はじまりのカメラ──GRが教えてくれたこと

初めて「撮ることが楽しい」と思えたのは、リコーGRを手にした日だった。 光を見る目が、少しずつ変わっていく。

1.リコーGR、はじまりのカメラ

初めて「自分の意思」で買ったカメラは、リコーGR。
たしか第二世代のモデルだったと思う。

仕事ではオンラインショップの商品写真を撮っていたから、カメラとはそれなりに仲良しだった。
でも、友達にはなれていなかった。

そんな私が、GRで初めて“写真を楽しい”と思った。
構えて、シャッターを切って、モニターに映る世界。
それが「誰かに見せるため」ではなく、「自分が見たいから撮る」ものになった瞬間だった。

見た目は小さいのに、重たい!

手に取った瞬間、「あれ、意外とずっしりしてる」と思った。
この小さな筐体の中に、すごい仕組みが詰まっているに違いない──
そう予感させる“密度”があった。

その重さは、私に「本物」を感じさせた。
軽さではなく、信頼できる重さ。

何かを写すための“覚悟”のような重みだった。

あかるい!

そして、驚いたのはその明るさだった。
これまでのコンデジとはまるで違う。
構図のことなんて考えたこともなかったし、「良いカメラとは何か」なんて定義も知らなかった。

でも、出来上がった写真を見たときに思った。
光が伸びやかで、空気が軽やかだ、と。
GRは、ただ“写す”のではなく、“見せてくれる”カメラだった。

恐らくこの瞬間、わたしのなかに「良いレンズは明るい」という図式が出来た。


2.PENTAXとの出会い

そのあと、PENTAXの一眼レフ──K-5を買った。
このカメラが、私の人生を大きく変えた。

現在のSONY一強時代とは異なり、当時はニコン・キヤノン全盛期。
何故PENTAXを選んだかというと、父親の影響が大きかったと思う。彼には「一眼レフといえばPENTAX(旭光学)」という図式があったようだ。

そして、様々なガジェット雑誌を読みあさった結果、古のマウントM42との相性の良さが決め手だった。
※オシャレなコマーシャル動画ですね

購入後、「ペンタックス K-5 オーナーズブック」(モーターマガジン社)を読んでみた。
そこで初めて知ったのが、“単焦点レンズ”という存在だった。
素人だった私は近くも遠くも撮影できるズーム機能がカメラの高性能さだと勘違いしていたのだ。

ズームでもない、手ぶれ補正もない。
けれど、その描写には心を奪われた。
単焦点レンズで撮った作品には、空気の透明感、光の粒子、ピント面の“凛”とした線が宿っていた。

気づけば私は「どんな被写体を撮るか」ではなく、「このレンズで撮りたい」と思うようになっていた。
それは、カメラという機械を超えて、“光を見るための道具”としてレンズを意識した最初の瞬間だった。


あとがき

思えば、この頃が私の“写真という旅”の出発点だった。

GRがくれた最初の喜び、K-5がくれた最初の衝撃。
あの頃の私は、ただ夢中でシャッターを切っていた。

撮るたびに、世界が少しだけ美しく見えた。


次回:第二回「オールドレンズの誘惑──手動のピントに宿る魔法」へ続きます。