文具店ではお金を包む袋の総称として金封と呼ばれています。
実は文具店のスタッフでもよく分かっていないカテゴリーだったりするのです。
「お金を包む」って、よく考えたら不思議な文化
日本人は、なにかにつけてお金を包みます。
お祝いのとき、誰かを労うとき、悲しい別れのときも。
その行為にはいつも、直接的に伝えないやさしさがあるように思います。
むき出しのままではなく、いったん紙に包み、文字を添えて渡す。
それは「お金を贈る」というよりも、気持ちを整えて相手に届けるという行為なのです。
私は、そこに意味があると思う
金封は形式的だとか、堅苦しいという声もあります。
でも私は、こういう“まどろっこしい文化”こそ好きなんです。
なぜなら、そこには人を思う時間があるから。
「いくら包もうかな」「どんな袋がいいかな」
――その迷いこそ、相手を想っている証拠ですよね。
日本人は、なぜかルールを守りたくなる(笑)
金封文化のおもしろいところは、「どんな袋を選ぶか」「水引は紅白か黒白か」など、とにかくルールやしきたりが細やかなこと。
しかも多くの人が、それを「守りたい」と思っているんです。
“誰に教えられたわけでもないのに、なんとなく気になる”。
なんだか、かわいい民族性だと思いませんか?(笑)
でも、その裏には「誰かを思いやる知恵」があるお金は、ときに人の関係をぎくしゃくさせる存在です。
だからこそ、日本人は“袋に入れて渡す”ことで、距離感や礼儀を守ってきたのだと思います。
ルールは面倒でも、その背景には「相手を気づかう哲学」がある。
金封の世界を知れば知るほど、日本人の人間関係の精密さが見えてくるのです。
代表的な金封以外にも、まだ知らない世界がある
葬儀や結婚式の祝儀袋は誰でも知っています。
でも、売場を見渡すと――
「寸志」「心付け」「大入」「白無地」など、どうやって使えばいいか分からない金封がたくさんあります。
それらは決して“特殊な袋”ではなく、日本人の細やかな心づかいが凝縮された存在です。
だから、語ってみたいと思うのです。
この連載では、そんな“謎の表書き”たちをテーマに、「どんなときに使うのか」「どんな気持ちを包むのか」を少しずつ紐解いていきます。
どうぞ、金封の世界へ一緒にお付き合いください。
次回予告
第1回:祝儀・寸志・心付け・大入──お金を包む言葉の温度差


