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それでも私は験を担ぐ

――小さなジンクス、大きな安心

あなたにも“験担ぎ”ありますか?

試験前にカツ丼を食べる。プレゼンの前日は必ず右足から靴を履く。そんなふうに、特に意味はなくても「やらないと落ち着かない」行動、ありますよね。

それはきっと、「験(げん)を担いでいる」のかもしれません。

「験担ぎ」ってなんだろう?

「験」とは、兆しや前兆という意味。昔の人は、ちょっとした変化や習慣に“良いことが起きそうな兆し”を見出し、自分から縁起を引き寄せようとしてきました。

つまり「験担ぎ」とは、未来を少しだけ良くするための、ささやかな自作自演。迷信と言ってしまえばそれまで。でも、そこには人間らしい希望や不安との向き合い方が見えてくるのです。

日本に根づく験担ぎ文化

たとえば、お正月の初詣やおみくじ、受験の合格祈願。食べ物にも験担ぎがたくさん潜んでいます。トンカツは「勝つ」、レンコンは「先が見通せる」、そばは「つるっとすべるように合格」といった具合に。

ビジネスマンも、実は無意識のうちに験を担いでいることがあります。「プレゼンの日はこのスーツ」「会議前に飲むのは必ずこの缶コーヒー」なんてこと、ありませんか?

手を清めます

私の験担ぎ

かく言う私にも、小さなジンクスがあります。

ひとつは、仕事を始める前にハンドクリームをつけること。出来れば良い匂いのヤツです。
キーボードを叩く前に、手を整える。これだけで、心まで整うような気がするのです。

もうひとつは、夜、眠る前に布巾を手洗いすること。洗濯機での自動洗いではなかなか落ちない汚れがあるのです。
シンクの中に今日の汚れを残さず、清潔な布巾を干してから眠る。それだけで「今日をきちんと終えて」「明日もちゃんと始められる」気がします。

そう、気がするのです。つまり思い込み。おそらく実際に起きる良いことや良くないこととは関係ありません。

しかし!

もし、ハンドクリームを忘れ、カサカサの手で仕事をしている時に良くないことが起きたら…。きっと私は結びつけてしまうのです。「ハンドクリームの儀式」を忘れてしまったことを。

自分を信じるための小さな儀式。これもまた立派な「験担ぎ」なのでしょう。

深夜の洗濯

験担ぎは、心の防寒具

科学的根拠なんてなくても、験担ぎにはちゃんと意味があります。それは、私たちの心を守るための仕組み。どこか不安なとき、少しでも自分を落ち着かせる「手がかり」を、自分で作っているのです。

「験を担ぐ人」は、未来をちょっとだけ信じている人

験担ぎは、言ってしまえば“気のせい”かもしれません。でもその「気のせい」が、自分の気持ちを前向きにしてくれるのなら、それで十分。

小さなジンクスの裏には、自分なりに未来を良くしようとする意志があります。験を担ぐ人は、きっと少しだけ未来は自分でよく出来ると信じている人だと思うのです。