なぜ類型に注目するのか
私は、双子の兄弟として生まれました。
よく「双子は通じ合う」と言われますが、実際、私たちは手をつなぐと、自分と同じ素材でできていることが分かるような、不思議な一体感を感じていたものです。
そんな私たちの日課は、毎晩眠る前に母の昔話朗読を聞くことでした。
(※ちなみに、ナゾナゾタイムと昔話朗読は、交互に開催されていました)
その昔話は、毎回違っていて楽しかった。
でも、あるとき気がついたのです。
「あれ? お姫さまって、いつも王子さまと結婚してるな」
物語の結末に、ある“型”のようなものがある。
子どもながらに、同じようなオチが繰り返されることに、なぜか猛烈に惹かれたのです。
それ以来、神話、昔話、伝承、怪談──
そんな「語られ続ける物語」に強い興味を持つようになりました。
世界中で反復される“型”の魅力
なぜこんなにも、同じ構造の物語に心を動かされてしまうのでしょう?
怪物は倒され、
人に化けた花嫁(あるいは花婿)は去ってしまい、
姫は王子と結ばれる──
いつだって似たような展開。
でも、飽きることはない。
むしろ私は、こう思ってしまうのです。
「他に道はなかったのか?」
「もっと違う結末がありえたのでは?」
「でも、こうなると分かっていても、グッときてしまうのはなぜ?」
そんなふうに考えながら、
好きな映画やアニメ、小説や漫画を見ていると、
「ああ、この作品も“あの型”に沿ってるんだな」と気づく瞬間があります。
きっと私は、「同じだけど違う物語」に出会うたび、
安心したり、驚いたり、心を揺さぶられてきたのです。
今後取り上げる“物語の型”たち
この連載では、私がとくに気になっている「物語類型」を、ひとつずつ掘り下げていきます。
Wikipediaに記されていた以下の分類をもとに、物語の構造を紐解いていきたいと思います。
✍ 物語類型一覧(予定)
- 異類(異種)婚姻譚
鶴の恩返し、一寸法師など - 異常誕生譚
飴買い幽霊 ほか - 見るなのタブー
鶴の恩返し、浦島太郎、イザナギとイザナミ、パンドラの箱、ロトの妻の塩柱 など - 変身譚
狼男、化け猫、クシナダヒメ など - 異郷訪問譚
浦島太郎 など - 継子いじめ譚
シンデレラ など - 末子成功譚
三匹の子豚 など - 致富譚
わらしべ長者 など - 感生伝説
豊臣秀吉、劉邦、朱元璋 など - 申し子譚
祈願によって子を授かる物語(玉水物語など) - セカイ系
『ほしのこえ』など - なろう系
現代的類型としての“転生もの”など - 難破物語
シンドバードの航海、ロビンソン・クルーソー ほか
記事の形式について
各回では、以下の形式でお届けします。
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概要解説(どんな型なのか)
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どんなプロットか(代表的な展開)
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現在に伝わっている物語(昔話や映画など)
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現代の私が思うこと(感想・考察)
さあ、物語を繙いていきましょう。
「何度も語られてきたこと」の中に、
私たちの心のかたちが、きっと浮かび上がってくるはずです。