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ドロバチの巣、撤去したら社長に「人でなし」と言われた話

先日、自宅のベランダでくつろいでいた時のこと。ふと目をやると、見慣れない小さな泥の塊が壁に付いている。近づいてみると、そこにはドロバチ(泥蜂)の巣が──。

ドロバチはスズメバチ科に属する単独性の蜂で、泥を使って壺のような巣を作る。おとなしい性格で、こちらから刺激しなければ滅多に刺さない「益虫」とも言われる存在だ。

……とはいえ。

私はベランダで本を読んだり、お茶を飲んだりするのが日課。ドロバチにとっては最高の巣作りスポットだったのだろうけれど、正直なところ、このままでは安心してくつろげない。

悩んだ末、蜂には申し訳ないが、巣を撤去させていただくことにした。

そして、会社でその話をしたところ──

「人でなし!」

思わず笑ってしまうようなツッコミが飛んできたのは、我が社の社長。生粋の昆虫好きで、社員が虫を害虫扱いしようものなら、すかさず擁護に回る。

社長曰く、

「ドロバチはな、幼虫の餌にするために必死でイモムシを狩ってるんだ。巣を作る場所がたまたま君のベランダだっただけで、人間に迷惑をかけるつもりなんて無いんだぞ」

その気持ちはよく分かる。

でもこちらも、ベランダで蜂と鉢合わせして刺されるわけにはいかない。

「共存」と「生活圏」の狭間で揺れた末の決断だった。


蜂と人間、それぞれの都合

ドロバチは基本的に攻撃性が低く、人にとっても益虫である。しかし、都市部で人間の生活空間と蜂の営巣場所が重なることは避けられない現実だ。

今回の件で改めて感じたのは、「どちらが悪い」という二元論では解決できないということ。

社長のように虫への愛情が強い人もいれば、私のように“安全にくつろげる場所”を優先せざるを得ない立場の人間もいる。

だからこそ、

「ドロバチが巣を作っても、そこに驚かず冷静に対処する知識」

「撤去せざるを得ない時でも、なるべく蜂に負担をかけない工夫」

こうした視点を広めることが、今後ますます必要になってくるのかもしれない。


 おわりに

社長の「人でなし!」発言は、きっと冗談半分、愛情半分。

でも、そんなやりとりがある会社って、なんだか平和でいいなと思った。

 

次にドロバチが巣を作りに来たら──

今度は、もう少し静かに場所を譲ってもらえる交渉術を考えてみよう。


コラム

実は崩した巣から何か長いものが落ちてきました。

「女王蜂かな〜」と思っていました。しかしドロバチの特徴は下記の通り。

特徴としては:

  • 泥で壺状・筒状の巣を作る(壁や岩肌などに付ける)
  • 単独性(孤独性)の蜂で、スズメバチのような集団営巣はしない
  • 幼虫の餌として捕らえた昆虫(主にイモムシや毛虫)を麻痺させて巣に蓄える
  • 見た目はスズメバチに似ているが、攻撃性は低い(人が不用意に刺激しなければ刺されることはまず無い)

つまり、落っこちてきた何かは女王蜂じゃない。餌の芋虫じゃん!!