悠久の時を経て磨かれた生活の知恵で、オンオフを切り替えたい!
自邸の一室を書斎用にリフォームしたり、使わなくなって物置部屋と化したゲストルームなどに急遽デスクを運び込んだり……在宅ワークやリモートワークの急増で、最近はお部屋の模様替えに悪戦苦闘されている方々のお話をよく耳にします。
しかし、部屋数に余裕があって広々とした一軒家住まいならまだしも、小さなお子さんがいる子育て世代や一人暮らしをされている方にとっては悩ましいところ。
集中力を高めるためには専用の仕事部屋を用意するのがベターですが、なかなか思い通りにいかないのがニッポンの住宅事情。リビングや寝室の一角に即席のワークスペースを設け、日々のメールチェックやお仕事に勤しむ方も多いのではないでしょうか。
でも、そこはやっぱり生活空間。なんとなく「集中できない」「ストレスを感じてしまう」という人も少なくないはずです。そこでお勧めしたいのが、かつて中国から伝わった「風水」を暮らしの中に取り入れることです!
風水と聞くと「縁起担ぎ」や「迷信」「胡散臭い」などと否定的に捉えられることが多いかもしれませんが、案外、理に適っている活用法が豊富。古くから蓄積された膨大なケーススタディを基にする統計学であり、人の行動や自然の摂理に寄り添った環境学ともいわれています。
もちろん、すべてを鵜呑みにする必要はありません。ご自身の住環境に合わせ、部分的にでもトライしてみましょう。
まずはワークスペースをどこに築くか
在宅ワークで最もよくみられるパターンは、ダイニングルームで作業を行うケースかもしれません。比較的大きな食卓があって、ノートパソコンや資料を広げるにも好都合。
とはいえ、本来ダイニングは食事を摂り、家族が団欒を過ごす場所です。時間帯によっては家族の往来が気になったり、食事のたびに仕事道具を片付けなければならなかったり、むしろ気が散ってやる気を損ねてしまいそうです。
また、心身を休め、しっかりと睡眠を取るための寝室で仕事をするのも、あまり好ましい状況とはいえません。風水の世界で、仕事をするにふさわしい場所は、陰陽五行説の「木」の気にあたるところ。
一方、日々の生活は「土」の気とされ、「機能の異なる部屋を一緒にする」のはできるだけ避けたほうがよいといわれています。
例えば、人の動線を邪魔しないデッドスペースにちょっとしたデスクを置いて、そこをワークスペースに仕立ててしまうのはいかがですか? ダイニングやリビングを見渡してみると、わざわざそこに置かなくても差し支えない収納ワゴンやラック、カラーボックスがあったりしますよね。そういったモノをこの機会に処分して、空いた壁際をワークスペースとして有効活用するのも手です。
家族が集う共有スペースでお父さんが仕事をしていると、ともに暮らしている奥さんや子どもたちにも想像以上に気を使わせてしまうものです。在宅ワークは家族との調和が何よりも大切。
お部屋の中にある程度独立した一角を設けることは、ご自身だけでなく家族にもストレスを感じさせずに済み、お互いのライフスタイルを妨げない工夫となります。
デスクの向きで運気を呼び込む
もし、家の間取りに余白があって、ワークスペースの位置をわりと自由に動かせる状況なら、デスクの向きにも意識を注いでみましょう。
風水では、ラッキーカラーと並んで重んじられているものに「方位」があります。
東西南北それぞれの方角には意味があり、とりわけ仕事運を切り拓くのはなんといっても東です。朝日が昇る方角に向かって仕事をしていると、物事を前向きに捉えることができ、エネルギーをチャージしやすいと考えられています。
また、静寂を示す北の方角は、精神が研ぎ澄まされ、集中力を高めるのに効果的。子どもの勉強机をこの方角に向かって置くとよいなどといわれています。
余談ながら、日頃、部屋にこもって文章を書くことが多い筆者も、北向きの出窓に向かってデスクを配置し、仕事をしています。北側は天候や季節を問わず、陽の光の入り具合が柔らかで、落ち着いた環境が作りやすいんですよね。
一説には「デスクの前には窓がない方がいい」ともいわれますが、愛用しているMacのモニターが遮ってくれるので、外の風景が気になって集中力が妨げられることもありません。仕事にじっくりと向き合うには、わりと道理に合った考え方だと思っています。
さらに、比較的日当たりがよく、人気運や名誉運に関係が深いとされる南は、対人コミュニケーションの機会が多い営業職やサービス業の人にぴったり。
ただし、目の前に大きな窓があって、常に直射日光を浴び続けているようなシチュエーションだと、落ち着いて物事に没頭することができませんよね。そういう場合は、カーテンやブラインドで光量を調節すればOKです。
仕事の吉方位とされているのは、以下の4つ
・東 成功運、発展運
・南 人気運、名声運、直感やひらめき
・南東 人間関係に恵まれる
・北西 社会的評価、出世運、勝負運
風水とは実に奥深いもので、デスクの向きだけに気を配ればいいというわけではないようです。
デスクを置く位置もこれに紐付けられます。例えば、部屋の北西側にデスクを置いて南東方面を向くように座ると、北西の吉作用で威厳や信用力が高まり、南東の吉作用によってコミュニケーション能力がアップ。組織やグループを率いるリーダーにとっては最強のレイアウトとなります。
古来より「天子、南面(なんめん)す」といわれてきたように、中国皇帝は北極星が輝く北を背にして玉座に座り、南を睥睨してきましたが、これも風水の思想によるものなんですね。
むろん、そこが生活空間であることを無視してまでこだわる必要はありません。さまざまな制約があって、デスクの位置まではおいそれと変えられないのが実情でしょうから、デスクに向かって座っているときに向いている方角を優先するだけで大丈夫。
仮に目の前の壁が吉方位でなければ、あえて壁を背にするかたちでデスクを置いたり、パソコンや椅子の位置をずらして相対する方角を調整したり、ご自身にとってベストの方位を探ってみてください。
癒し効果のある観葉植物で、気の流れをコントロール
デスクの置き場所を思い通りに変えられなくてもご安心を。ワークスペースを快適にする方法は他にもたくさんあります。
とりわけ、風水において重要視されているのが気の流れ。室内に悪い気をよどませず、いつでもよい気を迎え入れられるよう、適度な風通しを確保し、壁紙やカーテンを落ち着いた色味(グリーン系やブルー系)にするなど、ちょっとした心配りで作業効率をアップさせることができます。
最も手っ取り早いのが、ワークスペースの近くに観葉植物を置くこと。
基本的にどんな植物でも、風水的には開運パワーがあるとされていますが、成長力を高めてくれるのは、ユッカ(青年の木)、ゴムの木、パキラ、ドラセナなど、幹の太い植物たちです。
また、リラックス効果を図りたいのなら、ポトスやカポックといったミニサイズの鉢をデスクに飾るのもオススメ。前述の通り、リビングやダイニングの一角をワークスペースに仕立てるなら、生活空間との境界をパーテーションで区切るように観葉植物を並べるのも1つの方法です。
「観葉植物には、電化製品が発する悪い気を和らげる効果がある」と聞くと、なんとなくスピリチュアルな印象が強すぎて、どうしても眉唾物といった負の感情を持ってしまいがちです。
でも、グリーンには空気をキレイにする効果があり、目に届く範囲にグリーンがあると、不思議と気分までもが浄化されていくような気がしませんか? お部屋のアクセントにもなる観葉植物は、建築やインテリアコーディネートの世界においても、暮らしに潤いを与えるマストアイテムとして重宝されています。
文具を新調するのも気分をアゲる最良の方法です
持ち物は、使う人の「格」を表します。いいモノを身の回りに置き、大切に使うことは、風水の分野でも自身の品格をアップさせ、仕事の効率化につながるとされています。
せっかくなら筆記具をはじめとする文具はもちろん、ペンホルダーやデスクマットといった雑貨も一新して、気分よく仕事ができる環境を作ってみてはいかがでしょう。
そして、それ以上に大切なのがデスクまわりの整理整頓。
先ほど、気の流れについて触れましたが、風の通りが悪くてジメジメしていたり、ホコリが溜まってしまったりするような場所だと、仕事がはかどらないばかりか健康をも害してしまいます。
これこそが、風水は環境学だといわれているゆえん。デスクの上はもちろん、キャビネットの中もしっかり整理して、常に身の回りをキレイに保っておくことが、やる気アップの近道かもしれません。
風水は知れば知るほどに深遠な世界。ここまで挙げてきたお話以外にも「なるほど!」と頷けるインテリア術がいっぱいあります。それらを貴重なアドバイスと受け止め、在宅での仕事のみならず、生き方そのものの質を高めるヒントにしてはいかがでしょう。