なぜ鉛筆なのに、トンボ?
鉛筆の後ろにトンボマークがある鉛筆。懐かしいと思う人も多いのでは?
でも、なぜ鉛筆なのにトンボなのだろうか。そこで、トンボ鉛筆の社名の由来について調べてみることに。
日本を代表する文房具メーカーであるトンボ鉛筆は、大正2年に「小川春之助商店」として創業。創業時は創業者の名前から小川春之助商店という名で開始したが、昭和2年に「トンボ印」を商品マーク(ブランド)に採用。その後、昭和14年に人気があった「トンボ」のマークを社名にして「トンボ鉛筆」となったそうだ。
この「トンボ鉛筆(TOMBOW)」の社名は、もちろん昆虫の「トンボ」から来ている。トンボは別名を「秋津(あきつ)」といい、日本の象徴(古くは日本のことを「秋津洲」と呼んでいた)といわれていた。
勝ち虫とも言われ昔から縁起のいい虫だったことから、日本を代表する鉛筆に育てる意味を込めて、というのが社名の由来のひとつなのだそう。
なぜ、トンボを「TOMBOW」と書くのか?
トンボ鉛筆をよく見ると、鉛筆に書かれているロゴは「トンボ=TOMBO」ではなく最後に「W」が付いている。
謎の「W」。
わざわざ「W」を付けた理由は?それは、「言葉の勘違いを防ぐため」だった。
実は「TOMBO」だと、パっと見たときに「TOMB=墓」に見えてしまって「墓鉛筆」と勘違いされてしまうのでは、ということから誤読を避けるために最後に「W」をつけたとされているのだ。
なぜ、トンボは下向きから上向きに?
子どもの頃、トンボ鉛筆使っていたな~という人は特に、昔使っていた筆箱などに残っているトンボ鉛筆がないかチェックしてみて欲しい。そして、もしトンボ鉛筆が出てきたらトンボの向きに注目したい。
実はトンボの向きは、下向きから上向きへと変わっている!!!
以前のトンボのロゴ入りの鉛筆(1927年~1995年まで)は、トンボは下向きだったのだ。下向きのトンボには「お客様に頭を下げて感謝を忘れない気持ち」をあらわしているそう。
なるほど、トンボの向きにも意味があったのか。そして、探してみると…筆者の家にもあった、昔使っていたトンボ鉛筆。やはり、昔使っていたものはトンボが下を向いている!
では、なぜ上向きに変わったのかと言うと…2013年の創立100周年を機に「更なる発展を」というチャレンジ精神を表し上向きに変更したそう。
ちなみに、新デザインではトンボの羽が ∞(無限大)のマークのようになっているのだが、これは「無限の領域へ、無限の成長を遂げる」という思いを表現しているのだとか。
なぜか手に入れたくなる限定モノも
トンボ鉛筆にはいろいろな種類があるが、なかでもこの黄色いダース箱のデザインを再現した特製缶ペン入りのトンボ鉛筆が筆者のお気に入り。これはトンボ鉛筆8900番 70周年限定のセットとして2019年に販売されたもの。
トンボ鉛筆8900番とは1945年に写真修正用の超高級鉛筆として発売されたトンボ鉛筆の名品。「破竹(89)の勢いで売れるように」との願いを込めて付けられた名前のとおり、鉛筆の代名詞とも呼べる程のロングセラーだ。
「トンボ鉛筆8900番 70周年限定セット」は、レトロな黄色いパッケージになってから70周年を迎え、その記念として数量限定で作られたものだ。歴史ある8900番の雰囲気にレトロな缶ペンが本当によく似合っている。
他に、1928年に「最高の品質 トンボ鉛筆」をキャッチフレーズに発売した最高級製図用鉛筆「TOMBOW DRAWING PENCIL」を創立100年の記念に復刻した特別限定品も。
古き良き昭和を彷彿させるパッケージ、鉛筆が愉しめる限定モノに、大人ゴコロをくすぐられる。
トンボ鉛筆は、滑らかな書き心地と昔ながらのスタンダードなデザインが魅力。最近ではスマホやPCばかり使い、鉛筆で文字を書くことから遠ざかっている大人世代にこそ、老舗ブランドの鉛筆ならではの魅力を、もう一度味わってみてもらいたい。
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