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第1回:歯医者との仁義なき戦い

歯医者好きな人いる?

匂い・清潔感・音、すべてが敵

子どもの頃から、歯医者は大嫌いだった。
あの独特の匂い。
無駄にピカピカな床と、やたら整然と並んだ器具たち。
そして耳をつんざく「キュイイイイイィィィィィ」という機械音。

全部まとめて、私の神経を逆撫でする。

しかも私は歯磨きも下手で、すぐ虫歯になる。
なのに治療では大暴れ。
麻酔なしでゴリゴリ削られたトラウマは、いまだに夢に出る。


治療中、なぜか見守られる

さらに忘れられないのが、当時の先生の奥さんの存在だ。

なぜか毎回、治療中に診察台をのぞき込みに来る。
理由を聞けば、「先生のご子息と顔が似ているから」。

……治療中にそんな理由で見守られても、落ち着くわけがない。
あの頃のことを知っている先生方とは、今でも目を合わせづらい。


歯医者を変えても地獄は続く

大人になって歯医者を変えても、状況は好転しなかった。

一週間前に歯石を取ったのに、次の診察でこう言われたのだ。
「もう歯石が溜まってますね」

恐怖と恥ずかしさで、ますます歯医者嫌いに拍車がかかる。
麻酔を打ってもらえるから痛くはないのに、心のバリアは外れない。


行く時はもう手遅れ

こうして私は、歯医者に“コンディションが悪くなってから”しか行かない人間になった。

だから、毎回こうなる。
「これはかなり進行してますね」
「神経に届いてます」
「抜きましょう」

――歯医者は、私にとって今も「笑顔で残酷なことを言う人たちのいる場所」だ。


小さなコラム:歯医者は世界中で嫌われている?

実は、歯科恐怖症(Dental Phobia)は世界的にも珍しくない。
イギリスでは人口の約36%が、歯医者を「怖い」と感じているという調査がある。

理由は、痛み、機械音、治療の匂い、そして子ども時代のトラウマ。
……つまり私のようなケースは、世界基準で見ても“よくある話”なのだ。


 

このあと私は、さらに別の事件で歯医者との因縁を深めることになる。
――それは「親知らず全抜き事件」である。