セレンディピティから生まれたポスト・イット
何かを探している時に、探しているものとは別の価値があるものを発見する能力や才能をビジネスの世界では「セレンディピティ」と呼びます。実は、文房具の世界にも、偶然の出来事から生まれて大ヒットとなったものがあります。それは、スリーエム社が開発したポスト・イットです。
きっかけは偶然生まれた失敗作
1969年、スリーエムの研究員・スペンサー・シルバーは、強力な接着剤の研究を行っていました。ところが、研究はなかなか思うように進まず、失敗を繰り返してばかり。そんな中で「良くくっつくけど、簡単にはがれる」という奇妙な接着剤が出来上がりました。
普通なら失敗作として扱われますが、スペンサー・シルバーは「これは何かに使えないか?」と思い、さまざまな社員に話してみましたが、使い道がないと言われて放置されていました。ところが数年後、同社の研究員アート・フライが「讃美歌集のしおりとして使えるのではないか」というアイデアを思い立ちます。その後、スペンサー・シルバーと一緒に製品開発に着手したのが、良くつくけどすぐに剥がれる付箋紙、ポスト・イットです。失敗作とひらめきによって生み出されたポスト・イットは、あっという間に大ヒット製品になりました。
失敗を新たな価値につなげる発想が大切
このような、ポスト・イットが実は「強力な接着剤を作ろうとして、その過程の失敗品から生まれたもの」というのは有名な話ですね。ですが、この大ヒット製品が開発された背景には「変化に気づき、新しい価値観を受け入れる力」が、あったことが分かります。偶然生まれた失敗をただの失敗として終わらせずに、新しい価値につなげられる能力が大きな発見を生み出せることが、この逸話から感じ取れるのではないでしょうか。
しかし、さまざまな情報があふれている現代社会においては、例えば旅行途中でカフェに行きたければ、スマホにキーワードを入れて検索をかけるだけで、最短距離でお目当ての情報にたどり着くことができますし、人との出会いもフォローとブロックで最適化できるので、予定調和な出会いが多くなり、偶然に出会うことから得られるものが少なくなっているように感じます。
そもそも、偶然の出会いはどこから降りてくるか分からないもの。出会った時には、自分の考えに固執せず、新たな発見を前向きに受け入れるように心がけることが大事です。そのためには、生活の色々なところにアンテナを張っておきたいものですね。
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