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ワンダーランドと暗黒面──名人芸バイアスを超えて

今日は認知バイアスに関するおはなし。

名人芸バイアス(社内造語です)とは何か。

「仕組み化を軽視し、自分の勘や感性に頼って成果を出そうとする」
私自身、かつてはこの名人芸バイアスの代表でした。

 

私は文具屋です。

文具屋は自分たちで店を設計しない場合が多いです。じゃあ、お店はどうやって出来ているのか?

それは、問屋さんやメーカーさんへセクション毎に企画を割り当てて作ってもらいます。文具店は可否を判断するだけです。

私はどうしてもそれができませんでした。納得できない商品で売れないときの辛い気持ち…。
これを無くしたかったのです。

※実績とは関係なく、感情論で言ってます

そこで20年前ぐらい前から私は商品と什器をすべて自分で指定することにしたのです。

店舗設計書を作るのは私ひとり。内装は什器屋の仲間に助けてもらいながら、平面図からカテゴリー配置、商品と什器の一括選定、陳列指示書(ほとんど手書き)、POPやサンプルの準備、そして陳列。すべてを自分で抱え込み、ほぼ属人的にお店を作っていたのです。


光の時代──ワンダーランドと呼ばれた店

最初の三つのお店は、業界から大絶賛を受けました。
とくに「三つ目のお店」は伝説となり、文具業界で一番辛口と評判の営業さんから、こんな言葉をいただいたのです。

「まさにワンダーランドだ。どうやって作ったんだ!?」 

普通の文房具を格好良く見せる。
そういう魔法をかけた店づくりは、たしかに眩しく見えたのだと思います。多くの人がその方法を真似しに来ました。

そして、ヘッダ画像が当時の私が描いていた設計図です。
すべて手書きの設計図(笑)。いま見ると懐かしいけれど、再現性ゼロの“名人芸”だったことがよくわかります。


暗黒面──名人芸の限界

しかし四つ目、五つ目の店舗では暗雲が立ちこめます。

  • インターネット通販の台頭という時代の変化
  • 高コスト体質の重荷
  • 設計を軽量化するために他のメンバーを入れた結果、属人的スキルが共有されず仲間割れ
  • 再現性がなく、継続できない

結局、その二つの店はもう存在していません。
名人芸の光は一瞬輝くけれど、仕組みに落とし込めなければ呪いに変わる。私はその現実を痛感しました。


教訓

  • ノリや感性頼みから脱却すること
  • 実績(数字)を正しく読み取ること
  • 高コスト体質を低コストで再現する工夫をすること
  • 個人芸ではなく、組織運営と学習に昇華させること

名人芸が生んだワンダーランドは、結局「インクのシミ」のように再現できず消えていきました。だからこそ今は、陳列指示書や在庫管理システム、教育動画といった取り組みによって「名人芸を仕組みに変える」挑戦を続けています。


結びに


あの頃の自分に言ってあげたいことがあります。数字と友達になれ。
すべての商品(かっこいいヤツもダサいヤツも)は、誰かのために作られたという意味では等価値だ。

名人芸の終焉は突然に。現在、入社三日目の人でもシステム什器設計が出来ます。 自社製作のアプリケーションですので、興味がある方はご連絡ください。
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