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文具店社員の意義とはなんだろう?を考える

文具・文房具のKDM(Knowledge Designer’s Mart/ナレッジ・デザイナーズ・マート)のブログです。お客様に伝えたい想いや、KDMスピリット、はたまたKDMの日常の舞台裏まで。私たちのありのままの姿を発信しています。

世の中には文具ライターさんや、研究家、収集家がたくさんいます。皆さん本当に詳しいですし、文章も上手です。その中で文具店社員の役割は何でしょう?

端的に言うと「頼りになること」じゃないかと思っています。

文房具自体を趣味にする方の他に、何か目的があって、その実現のために文房具が必要で買いにやってくるお客様がいらっしゃいます。実は後者のお客様の方が圧倒的に多いです。

昔、私は自分のお店を特別な文具店にしたくて、とにかく新しいもの、珍しいもの、美しいものをおくことに執着していました。しかし、日々やってくるお客様のお問い合わせはこんな感じです。

普通のボールペン下さい、替芯下さい(1日の問い合わせの7割はこれです笑)

替消しゴム(多機能ボールペンやシャープペンシルの上にくっついている小さいヤツですね)ありますか

毎週必要になるのでチュパックを店に置いて下さい

元帳がないなんて!

晋山式にお金を包みたいけどどんなご祝儀袋を使ったら良いですか

退職届けの専用用紙を下さい

石に木材をくっつけたいのだけどどの接着剤を使ったら良いですか

普通の文房具ばかりでつまらない

私の送りたい年賀状の柄がありません

この店は商品の数が多すぎて欲しいものが探せない

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新学期に合わせてノートの在庫を多めにしたのに予想が適当すぎて3分で完売。いったいこの地域の学生が何冊のノートを消費するんだ??
※今思うと、商圏内の学校の数、1校あたり生徒数、ノートの必要な科目数、自社の地域占有率を考える必要が本来はあったのだと思います

15年前新入社員だった私は打ちのめされました。世の中の営みは多様性に満ちていたのです。文具店は自分の好きな文房具やメーカー、好きな品種だけを相手にするわけにはいかないのです。

実は文具店というのは日本で暮らす多くの人にとって、幼い頃から購買体験をなんども繰り返しているため「普通、文具店だったらあるでしょ」という最大公約数の値が大きいのです。これを全うするには、人々の暮らしを知ること、想像力、問題解決力が求められます。

お客様が「文具店だったらこのぐらいやってくれよ!」と思っているものを先回りして準備すること。自分にとって不要でも、ある人にはとても必要なので存在している商品がたくさんあるわけで、セレクトショップではなく「文具店」であるならばまず機能を満たすこと。これが頼りになるお店の源だと考えています。

ステキなビジュアルをした新商品カタログを見ながら「カッコイイから置きたいなあ」なんて夢見ながら日々考えます。その前に自分のお店は過不足なく文具店の機能を満たしているだろうか?と。

KDM鹿児島店
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