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一家に一台、燻製ポットのススメ

「燻製は、キャンプやバーベキューといった野外イベントで作るもの」「家では煙が気になってできるわけがない」。そんなイメージを持っている方に朗報! スモークポットがあれば、気軽に家庭で燻製が味わえ、料理の幅が広がること間違いなし。ぜひお試しを。

意外とカンタン! おうちで燻製

すっかり遠ざかってしまった趣味の一つにアウトドアがある。以前は家族みんなで本格的なキャンプに興じたものだが、ここ数年はせいぜい近所にある砂浜や公園へ散歩に行くのが関の山。ましてやコロナウイルスの影響で自宅にこもりがちの昨今にあっては、遠出すること自体がはばかられる。

キャンプや日帰りバーベキューに出かけると、必ずといっていいほどこしらえるのが「牛ホホ肉の赤ワイン煮」と「燻製」だった。ワイン煮は、食材を炒めてじっくりコトコト煮込めばOK。味付けさえ大きく間違えなければ、自然の中でいただくというスパイスも手伝ってなかなかに美味。評判もいい。また、燻製も手間のかからない調理法の一つだ。なにしろ煙で燻せば勝手においしくなるのだから、ハードル高めに思えて、実は手軽にできちゃうオトコ料理の代表選手といえる。ただし、筆者が使っていたのは専用の折りたたみ式箱型スモーカー(割と本格派のヤツ)で、組み立てや片付けなどそこそこ手が掛かる。キャンプが終わって帰ってきてから、内部にこびりついた汚れを掃除したり、面倒なメンテナンスを要したりもした。

燻製は作る過程も楽しめてうまいけど、ちょっと億劫。この固定概念を吹き飛ばしてくれたのが、とあるフードコーディネーターさんだった。

たまたま雑誌の撮影でご一緒する機会があって、キッチン付きのハウススタジオを貸し切って実際にいくつかの料理を作り、レシピも含めて紹介するといった仕事内容。その時、彼女が用意してきたのがスモークポットだ。ちょうどタジン鍋のようなサイズ感と形状で、フタを開けると網が敷いてある。これの底面にひと握りのスモークチップを敷き、あらかじめ下処理をした食材を網の上にどんどんぶち込んで、コンロの火にかける。10分も待てば、こんがり色目をつけた茹で卵やチョリソーができあがり! それらをトーストに挟んだクラブハウスサンドウィッチは、スモーキーな風味が食欲をそそる格別の一品に仕上がった。

さっそく、くだんのフードコーディネーターさんにこっそり教えてもらって、お揃いで購入したのがコレ。ホームセンターやアウトドアショップへ出向けばよく見かける汎用品だが、燻製専用のポットなので温度計がおまけで付いてくる。

さっそく、ポピュラーな食材で燻製づくりにトライ

特徴は、中に網が敷け、鍋底と一定のクリアランスが保てる点。このクリアランス部分に、市販のスモークチップをひと掴みほど(約10g)、こんもりと山型に撒く。ちなみに筆者は、ヤニっぽさや渋味が苦手。ふんわり香りを纏わせる程度の燻製が好みなので、チップの量はあえて少なめにしている。短時間でしっかり茶色になるまでビターに燻したいのなら、鍋底にまんべんなく敷き詰めるくらいでもいい。また、本来であればチップの焦げ付き防止にアルミホイルを敷くのが一般的なのだが、不精な人はそのままガスコンロに直行すべし。

 肝心の食材は、温度管理や時間配分が多少ルーズでも、失敗が少ない茹で卵とソーセージをセレクト。燻製は食材に水分を含んでいると酸味が強くなり、エグみが際立ってしまう。キッチンタオルなどであらかじめ水気を拭き取り、ほどよく乾燥させておくのをお忘れなく。

火にかけて数分経つと、蓋に開いた蒸気を逃がす穴から勢いよく煙が噴き出してくる。こうなると、キッチンがあっという間に香ばしい匂いで充満してしまうため、換気扇はぜひフル回転で。

さて、頃合いを見計らって蓋を取ったらご覧の通り! 今回は、鍋の中にこもる熱で食材を温める「熱燻(80℃以上の高温で燻す方法)」効果も狙って、トロ火で15分ほど放置したらこうなった。うん、いいあんばいの色加減。

もちろん、どんな食べ物を燻製にしたいかによっても最適な燻し方は変わる。例えば、ハムやサーモンなど、あまり熱を通したくないものは、早めに火を落として鍋の中を30〜60℃程度に保つ「温燻」がおすすめ。チーズなども種類によっては溶け出してしまうので、この温燻あたりがベターかもしれない。また、文字通り低い温度でじっくり香り付けを行う「冷燻」という方法もある。

もう一つ大切なのが、スモークチップの選び方だ。チップにはさまざまなフレーバーがあり、食材の味を引き出す選択肢が豊富。リンゴはフルーティな香りが特徴で、あっさりした鶏肉や白身魚にぴったり。やさしい香り付けと色付きのよさが持ち味のナラは、チーズや魚全般に合い、初心者にも安心な燻煙材。クセのある豚肉や羊肉、サンマなどは、やや香りの強いサクラが適している。あれこれチャレンジしながら自分好みの味を見つけたい。

できあがった燻製をそのまま酒のアテにするもよし。燻製卵を刻んでサンドウィッチやポテトサラダの具材に用いれば俄然旨味が増してくる。気軽にできて料理の幅を広げてくれる燻製づくりは、それそのものをイベントにしてしまえば、休日を家族で和気藹々と過ごす機会にもなるだろう。

さぁ、案ずるより産むが易し! スモークポットで燻製づくりに挑戦してみてはいかが?