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東海エリアの「やきもの」はすごいのだ!

常滑焼、瀬戸焼、美濃焼、萬古焼…。東海エリアには日本有数のやきものの産地が点在しています。今回はそんな「やきもの」についてのお話です。

そもそも「やきもの」って何?

「やきもの」は、陶器と磁器の総称。この2つの違いってみなさんご存知でしょうか?

陶器

原材料は陶土と呼ばれる粘土で、厚手で土のぬくもりや素朴さが特徴。代表的なものに美濃焼(岐阜)や信楽焼(滋賀)があげられます。

磁器

原材料は陶石とよばれる岩石。素地の色は基本白で、鮮やかな色絵が施されます。代表的なものに、九谷焼(石川)や砥部焼(愛媛)があります。

日本には陶磁器の産地が多数ありますが、鎌倉時代以前より現在まで生産が続く6つの産地を総称して「六古窯(ろっこよう)」と言います。具体的には、信楽、備前、丹波、越前、瀬戸、常滑の6つがそれにあたるのですが、これらは日本古来の技術を継承していることから、生粋の「日本のやきもの」とされています。

つまり、日本で生まれて育った、日本が誇る窯ってことですね。

そんな六古窯ですが、みなさん、お気づきでしょうか。6つの窯うち、東海エリア(というか、愛知県!)にその2つがあるということを!(筆者は愛知県在住)

そんな2つの産地で作られているやきものをまずはご紹介しましょう。

 

六古窯の中でも最古で最大規模の「常滑焼」

「常滑焼」は、その名の通り愛知県常滑市周辺で作られている陶器。知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土を使用しており、その性質を活かした「朱泥」と呼ばれる赤茶色の急須が有名です。

この急須、鉄分がお茶の苦みや渋みをまろやかにすると評判なんですよ。

ちなみに、こうした器だけでなく常滑焼は建材などにも使われています。有名なところでは、東京駅舎の赤レンガがそう。すごいでしょ。

常滑にはやきもの散歩道と呼ばれる散策ルートが整備されているので、実際に足を運んでみるのも楽しいですよ。レンガ造りの煙突や釜、陶器の廃材を利用した坂道など、みどころも多く、やきもの文化に思う存分ふれられます。市価より安値で常滑焼が買えるショップもあるので、チェックしてみてください。

陶磁器の代名詞「せともの」

陶磁器の食器を「せともの」と呼ぶ人がいるのですが、この呼び方は「瀬戸焼」からきている名前です。

瀬戸焼は愛知県瀬戸市を中心に作られているやきものの総称で、六古窯の中で唯一、器の強度を高めるために釉(うわぐすり)をかけて焼くという技法をとっていたことでも有名。

さらに大きな特徴が、陶器も磁器も焼かれる産地ということ。

原料も焼成温度も異なる2つが同じエリアで作られるというのは、とても珍しいんです。ただ、どちらかといえば現在は磁器が主となっています。

瀬戸へ行く機会があれば、ぜひ「窯垣の小径」へ寄ってみてください。約400mの細く曲がりくねった坂の多い路地なんですが、かつて窯の燃料や焼き物を運ぶために使われた道で、国内では瀬戸でしか見られない景観が続いています。周辺には窯元やギャラリーもありますよ。

多種多様なデザインが魅力な「美濃焼」

六古窯以外では、愛知県のお隣、岐阜県にもすごいやきものの産地があります。それは「美濃焼」が生産されている岐阜県・東濃エリア。生産量はなんと日本の陶磁器生産量の約半分!日本一の陶磁器の産地として全国的にも知られているんですよ。

これを読んでいるみなさんが日常生活で何気なく使っている食器も、実は美濃焼かもしれませんね。ちなみに、日本で作られているどんぶりの多くが美濃産。どんぶりの生産量も日本一なんですよ。

さて、肝心な美濃焼の特徴ですが、1つの様式がなく「特徴がないのが特徴」と言われています。

これはその時代に合った釉薬や技術を築いてきたため、さまざまな技法を持っているからです。美濃焼には「志野」「織部」など、15種類もの伝統的工芸品が存在しています。

東濃エリア、それぞれの街を巡って、お気に入りのうつわを探すのもおすすめです。特に土岐市は陶磁器屋が集まる団地があり、道の駅などにもたくさんの器が売られています。品ぞろえも豊富で、お値段も市価の15%~20OFF。普段使いの器を揃えるならぜひ行ってみてください。

 土鍋といえば、「萬古焼」

最後に紹介するのは「四日市萬古焼」。三重県四日市市で作られている陶磁器のことですが、陶器と磁器の性質をあわせ持つため、半磁器に分類されています。

耐熱性に大変優れたやきものなので、その耐熱性から急須や土鍋が代表的な生産物になっており、特に土鍋は国内シェア約80%を占めているんだとか。

あとは夏に見かけるブタの形をしたアレ。実は蚊遣りも萬古焼なんですよ。こうしてみると、「萬古焼」という名前は知らなくても、意外に暮らしに溶け込んでいて馴染み深いですよね。

 

さて、全国にはまだまだたくさんのやきもの産地があります。少しでも興味が出たなら、ぜひ地元のやきものを探してみてください。

最近はコロナ禍で自炊ニーズが高まり、「うつわ」が注目を集めているんだそうです。料理の見映えを良くしようと、こだわりの食器を購入する人が増えているのがその理由のひとつみたいですが、そんなうつわを地元のやきもので揃えてみるのも、楽しいかもしれませんね。

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