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アツい、陶器のまち

2007年40.9℃を記録して以来、「日本一暑いまち」として、すっかり有名になった岐阜県多治見市。そんな多治見市に四半世紀近く暮らす筆者の独自の視点で、「陶器のまち」としての魅力をピックアップ。ぜひ、暑いだけじゃない多治見を知って欲しい!

風情ある通りに聞こえる、美濃焼の癒しの音色

 

暑いまちとして名をはせた多治見だが、地場産業の陶器やタイル製造技術を生かし、道路の路面温度を下げる舗装を開発するなど、暑さを逆手に取った振興策にもイロイロと取り組み中。そんな中、とっても癒される涼体験ができる、多治見の夏の風物詩をご紹介しよう。

 

多治見市は昔から美濃焼のまちとも呼ばれ、市内には多くの工場や作陶関連施設が点在している。だが、その美濃焼で出来た風鈴、その名も「美濃焼風鈴」(そのまんま!)をご存知だろうか。毎年夏になると、多治見駅や公共施設などに吊るされ、チリンチリンと涼しげな音を奏でている風鈴を。

 

 

美濃焼風鈴の音色を楽しむ絶好の場所として、筆者がおすすめしたいのが「多治見本町オリベストリート」だ。この多治見本町オリベストリートは、明治から昭和初期にかけて美濃焼の陶磁器問屋が軒を並べ栄えた通りで、当時の面影を残す古い蔵や商家が残っている。

ただでさえ風情ある通りなのだが、商店や民家の軒先に吊るされた美濃焼風鈴の美しい音色によって、より一層風流に、涼しげになる。普段は(生活圏内のため)車で通り過ぎてしまうことが多いが、この風鈴の音色を聞くために、車から降りてゆっくり歩きたくなるのだ。

 

相棒になるような、お気に入りのカップに出会う

 

この「多治見本町オリベストリート」には、素敵な美濃焼と出会えるショップやギャラリーが多いので、自分好みの陶器を求めハシゴしてみるのもいいだろう。

 

写真は、美濃焼ショップ「織部 うつわ邸」。築100年程度になる米問屋を改築し、趣たっぷり。

 

地元人の変なプライド?からか、灯台下暗し、いや、近すぎて遠い存在、いやいや、いつでも行けるだろうという考えがあったからか、ずっと気になっていたくせに、今日が初来店。表に掲げてあった氷旗にもそそられ、ふらふら~と中へ足を踏み入れてみた。なんと、中では和風庭園が美しい中庭を眺めながら、茶室で抹茶や(夏には)かき氷も楽しむことができる。

2階には広々とした畳に商品が展示されている。

 

作品をじっと眺め、お気に入りを探すひとときは、時間がゆるやかに流れているようにも感じられる。人間国宝である陶芸家の展示コーナーもあり、買い物だけでなく陶芸の素晴らしさも実感。さらに、先進的な陶芸作家の発信の場でもある貸しギャラリーもあって、陶芸の新たな息吹を感じることもできるのだ。

 

筆者は、ひとめ惚れしてしまったマグカップをGET。この先、コーヒーを飲むときの相棒になってくれるだろう。

 

気づけば、そこに「やきもの」が

 

話は変わるが、わが子が小学生の頃、学校の授業で毎年「土粘土の作品を作る」というものがあった。さすが、陶器のまちと言われる地域だけあって、紙粘土や油粘土ではなく、土粘土なのか~と思ったものだ。

 

しかも、多治見の小学校にはどこも窯が設置されていて、ちゃんと窯焼きされる。窯で焼くので、野ざらしでも大丈夫。そのため、子どもがいる家庭の玄関先や庭に、学期末頃から(学校から持って帰ってきた)土地粘土の新作が飾られる、なんていう光景は、あるあるなのだ。

 

また、多治見には「岐阜県現代陶芸美術館」や「美濃焼ミュージアム」、最近では、その意外な外観で話題になった「多治見市モザイクタイルミュージアム」など、陶芸(やきもの)に関する美術館・博物館も多い。

 

普通の美術館には行ったことがなくても陶芸の美術館には行ったことがある、これも多治見市民あるあるかもしれない。

筆者もよく、幼い子どもと一緒に「こども陶器博物館KIDS LAND」へ行ったものだ。

 

ここは、大正時代から現代までの子ども用茶碗約800点を展示する博物館で、小さな子どもで絵付け体験ができる工房もある。幼い頃から日常に「やきもの」が存在し、ふれることができる暮らしの中で子育てをしていたことを改めて実感。

 

大人になってからでもお金を払えば叶うだろうが、子どもの頃にその土地ならではの文化を体験できることは、実はとても貴重なことだ。

 

新たな陶芸家を生むまち

 

そう言えば昔、まだ名古屋に住んでいた頃、街ナカで会社帰りに陶芸教室へ通おうと見学に行ったことを思い出した。「陶芸家ってどうやったら、なれるんだろう?」疑問に思っていたが、その答えが多治見にあった。

 

それを知ったのは、ごく最近。土岐プレミアム・アウトレットにできた「RYOTA AOKI POTTERY」で陶芸家 青木良太さんの存在を知ってからだった。一瞬でファンになり、コップやお皿を購入。

 

彼がどうやって、この作品を生み出す陶芸家になったのか?プロフィールを見てみると…、「多治見市陶磁器意匠研究所卒業」と書かれていた。

 

「多治見市陶磁器意匠研究所」は、「やきもの」の新たな未来を開いて行くための人財育成を行う施設で全国から陶芸を志す人が集まってくる、との事。

 

他にも多治見には「岐阜県立多治見工業高等学校 専攻科 陶磁器科学芸術科」もあり、ここでは将来、陶磁器に関わる職業に就く人材の育成に力を入れ、陶芸家を目指す人はもちろん、陶磁器関連の企業に就職したいと考えている人の支援も行っているそう。

 

陶芸家への道は、こうやって切り開くのか。そして、未来の陶芸家が、多治見にはまだまだ、たくさんいるのだ。そう思うと、勝手に誇らしくなってしまう。

 

 

 そうそう、多治見には、カフェやちょっとした居酒屋でも、目にする器や盃にもこだわりが感じられるお店が多い。例えば「うつわとごはん カフェ温土」では、お店で扱う器は全て多治見で陶芸を学んだ若手作家のものや、地元窯元のもの。新鋭作家の作品の魅力にいち早く気づき、ファンになる楽しみを味わえるのも魅力だ。

 

多治見が舞台のアニメも!

 

さらに、陶芸のまち多治見を舞台に伝統工芸品の美濃焼をテーマとした学園漫画「やくならマグカップも」のアニメ化が決定した、というニュースが飛び込んできた。陶芸部の女子高生4人の成長を描く物語が全国テレビで放映されるのだ。

 

  “まちを元気にしよう”という市民有志のプロジェクトの一環としてフリーコミックの発行が始まってから約10年の歳月を経てのアニメ化だ。暑いまち多治見が、もっとアツく注目されることに期待したい。

 

 

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