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世界を股にかける「ムジカ」の誕生/ムジカコーポレーション代表・眞壁氏対談 vol.1

MONOSWITCH信田とモノ業界のキーパーソンとの対談企画。今回は岐阜県大垣市のオーディオメーカー/ムジカコーポレーション代表眞壁征生氏にインタビュー。創業時のエピソードからオーディオへの思い、業界の裏話を紹介しよう。

海外向けに小型アンプを開発製造。今では、輸出先は海外37カ国に

信田(以下、信)「実は、僕もずっとオーディオ好きだったので、眞壁さんにお会いする前から商品のことは知っていました。住所を見たら大垣と書いてあったので、同じ岐阜のモノづくりメーカーということで、ムジカさんにはいつか訪問したいなと思っていました。 ムジカさんでは、創業当初からアンプを作っていたんですか?」

眞壁(以下、眞)「もともとは、父の会社が産業機器の会社で、そこに私が入ってオー ディオ部門というものをやらせてもらっていたのが始まりです。最初からアンプを作っていましたよ」

「大きめのプリメインアンプがありますよね?あの商品から始められたんですか?」

「日本では、幅が40cmのフルサイズのコンポが主流なんですけど、ウチではフルサイズのコンポは作ったことがなくて、実は一番大きなものでも30cm。当初からヨーロッパへの輸出を考えてまして...。ヨーロッパでは小型のものが流行っていますので。『ムジカ』という名前自体、海外を意識して付けました。ラテン語でミュージック。その音楽という単語 で、世界中の多くの方にオーディオの良さを理解してもらいたいという思いがあります」

「当時の日本のアンプは、デノンやラックスマンなどの大型のものが主流でしたね。それを小型にということですね。では、なぜヨーロッパへの販売を想定されたのですか?」

「父の代からの付き合いもありましたが、その頃日本には小型のモデルがほとんどなく、made in Japanのモノを輸入したいとお声がけいただいたことも理由です。今はトー タルで37カ国ぐらいに輸出しています」

「やっぱり一番のマーケットは、イギリスなんですか?」

「イギリス、ドイツ、フランスあたりは、オーディオメーカーがたくさんありますし、もうオーディオが普及しきっている部分があるんです。ですから今、マーケットとして大きいのはウクライナやスペインとか。どちらかというとヨーロッパの外側の国が多いですね」

「そういった国々では、JBLやタンノイなどの大きいスピーカー、アンプから始まるんですか?」

「大きいモノはアメリカや台湾、香港、韓国あたりだけですね。ヨーロッパでは、大きいモノは受け入れられにくいんです。JBLもアメリカ向けで作っているモノは大きいですが、ヨーロッパ向けのJBLというモノがちゃんとあり、それはやっぱり小型なんです」

オーディオ専門誌への広告掲載より、ブログ宣伝で一気に拡販

「ヨーロッパを中心とした海外への販売にあたって、広告宣伝などの戦略はどうされていますか?」

「海外への販売を考える上で、製品名にもこだわっています。ディストリビューター(卸売業者)と話をしながら、製品名を決めていくんです。今でもフラグシップモデルは『ライチョウ』、これは岐阜県の県鳥から名付けました。岐阜県の伊吹山から名付けた『イブキ』 とかも。ヨーロッパではむしろ日本名の方がウケるということで。ただ『ライチョウ』『イブキ』といった言葉は発音しやすいようなんですけど、日本語によっては発音できないような言葉もあるので。いろいろな言葉をピックアップして、ヨーロッパ人が発音しやすい言葉の中から選んでいます」

「雑誌広告などは全く見かけませんが、当初からヨーロッパ向けの販路がある程度みえていたため、あえてオーディオ雑誌などに広告掲載はしなかったのでしょうか?今、オー ディオ雑誌はどうなっているのかと思って見ていたら、結構多種ありますよね。ステレオサウンド、管球王国とか...」

「最初の3年くらいは、普通に広告を出していました。ただ、オーディオ雑誌などの広告は、読者にとってあまり効果的ではないように思えてきましたので、もしかして広告掲載を全部やめてしまっても、たいして売上は落ちないんじゃないかと思いまして。試しに1年間全く出さなかったんですよ。そのかわり宣伝になればと思って、ブログを始めたんです。今はブログのトータルアクセスが400万を超えています。だいたい月に6万〜7万くらいのアクセスがあるんですけど、これを1年間やってみたら売り上げが増えたんです。ですから、もう雑誌広告はやめようと」

「そういう順番だったんですね。なにか、雑誌社ともめたのかと思ってました(笑)」

「今でも毎月、広告を出してくださいという話は、いろいろな雑誌からひと通りはきますよ(笑)」

世界から高い評価を受ける「ムジカ」。国内生産で、メンテナンスにも配慮

「でしたら、今も海外への販売の比率は、かなり高いんでしょうね?」

「いえ、今はそれほどでもないです。日本国内での販売が好調な時は、海外は低くなるんです。日本国内が不景気な時は、海外の売れ行きがいいんですよ。高くなったり低くなったりですね」

「いわゆる、為替(レート)の問題ですか?」

「そうですね。それもあると思います」

「海外でも、だいたい同じような価格帯なんですか?主力製品のセットだと、だいたい1,000ユーロくらい?」

「そうですね。価格帯は、世界中でほぼ同じなるように設定しています」

「起業されて、一番苦労されたことは?」

「自分自身は、すごくかたいビジネスをしているつもりなんですけど、端からみるとすごくベンチャーに見えるみたいなんですね。海外の売れているオーディオ機器を日本に紹介して売るとか、オーディオのアンプを作って海外に売るとか...。特に最近は、中国から輸入して売っちゃうっていう販売会社が多いんですが、うちみたいに、あえて国内で作ってそれを販売しているのも珍しいみたいで。ただ、国内生産だとメンテナンスもできますから安心できるんです」

「そういうところで、製品の質やアフターの信頼性も高まっているのが、国内でも海外でもオーディオ好きからムジカ製品の評価が高い理由なんでしょうね」

「実は、こちらに訪問する前に、ほうぼうで大垣の人と聞くと、ムジカさんってメーカ ー知ってる?って聞いてたんですよ。たまたま当社のお客さまから『あー知ってる知ってる!あのすごい変わった人』って言われました(笑)。そんな経緯があって、お会いする前はどんな方なのかと。変わった人と言われると気になって、理系バリバリの人なのかとか想像していたら、眞壁さんがこんなに話しやすい方だったので...。 ちょっと意外でした(笑)」

vol.2では、眞壁氏のパーソナルな部分での音楽との関わりや、眞壁氏が感じているオーディオの魅力について伺います。

vol.2/眞壁氏とオーディオ&音楽との関係