つい先日、会社でお世話になっているコンサルタントさんとお話ししました。
日々ネタ探しをしているので、会う方には「最近なんか買いました??」と尋ねてみます。
野 :「で、先生は最近何か買いました?」
先生:「書道セット買いました」
野 :「書道セットですか??」
ちょっとした騒ぎです。冷静に考えれば、書道始めたのかなとかいろいろ考えられるのですがあまりにも突飛で喜んでしまいました。
※ちなみに先生は書き初めのために購入されたようです
私が子供の頃、習いごととして「書道教室」に通っている子供達がたくさんいました。小学生だった私が通っていた教室の先生は本当に怖いおばさんで、書いているときに肘がさがっているとビシ!と肘を叩く先生でした。
スパルタ式です(令和の世界観ではなかなか難しい教育方針です…)。
小学生ですから、当然すぐに辞めたくなったのですが、教室の帰りに少年ジャンプの早売りを駄菓子屋で買いたかったので、打算半分で卒業まで通い続けました。きっとよくある昔の小学生の日常だと思います。
この頃の書道セットは多分こんな感じでした。角張っています。
今はこんな感じ。すごくカジュアルなんです。


小学校1年生だった私は昔スタイルの角張った手提げにすごく憧れて、手に入れたときはすごく嬉しかった記憶があります。なぜなら、書道を習っていないと持つことができない「お兄さんお姉さんの持ち物」だったからです。
そのせいかか現代的スタイルを「なんか、ここまで子供が好きそうなデザインする意味があるのか!?」と感じておりました。
なぜ変わったのか
この形状変化にはきちんと意味があります。端的に言うと、登下校中の安全性向上です。
表面の色柄はさておき、どのバッグにも共通してショルダーベルトがつけられています。
思い出してみて下さい。小学生の頃、通学時どんなものを持っていたでしょうか?
- ランドセル
- 体操着バッグ
- シューズ入れ
- 給食袋
- 水彩セット
- 書道セット
- 水筒
こんな感じだったと思います。
ランドセルを背負って、水筒を肩から下げて、手には書道セットと体操着バッグを持つ…。(まるでギリシャの重装歩兵だよ)
両手がふさがった状態で転倒すると、地面に手をつくことができません。それを防止するために肩からかけることができるショルダースタイルが好まれるようになってきたそうです。
また、ランドセルをはじめとした子供達の持ち物がとてもカラフルになって、赤や黒で角張っていて、「書道」と筆文字で箔押しされたような合皮バッグは見た目の釣り合いが取れなくなってきてしまったのかもしれないですね。
というわけで、旧スタイルの書道セットは徐々にニュースタイルに押され、置いていないお店が増えてきたのです。実は今回資料として実物を探したのですが、本当にどこのお店にも売っていなくて絶滅危惧種であることがよく分かりました。
なぜいまいち売れないのにお店に置くのか
私が文具店設計をするとき、今も昔も大事にしていることがあります。
それは「多様性」です。
今日話題にしているようなマイナースタンダードアイテムは年間販売金額が小さいため、小さなお店では真っ先にカットされてしまうアイテムです。しかし、なにごともバランスが大切。
少なくとも流行の品はスーパーやホームセンターの文具コーナーにも売っているわけですから、万一文具店で品切れしてもピンチヒッターがいます。反対に、一部から支持を受けているにもかかわらず前述の文具コーナーではおけない文房具は専門文具店が担うカテゴリーです。なにしろ代打はいません。
現に古風なユーザーの多い地域では、私と同じく角張ったアレをご所望になるお客様が多くいらしゃいます。
専門文具店に期待される大事な機能の1つは「レガシーツール需要への受け皿」だと思うのです。
1種類で良いので、置くことにとても意味があるアイテムのように私は思うのです。