文具店スタッフへお客様がお問い合わせを下さるということは、何か解決したい課題があるということです。
その時に、文房具の商品名や一般名称を知っていればあっさり進むのですがそうは行かない!なぜなら文房具の名前は広く知られておらず、知らなくても困ることがないからです。
ということで私達はいつも身振り手振りや利用方法を尋ねて目的物までなんとか辿り着きます。同じ日本語使い同士なのに、なぜか通じ合えない私達なのです。
今日はとりわけ名前が広まっていない文房具をご紹介致します。
「用箋ばさみ」
ゴツい名前です。
実はこの呼び方は文具店スタッフでも知らない人が多いのです。
英名の「CLIPBOARD(クリップボード)」の方が少しだけ有名で、こちらの呼び方を利用するスタッフが多いように感じます。
他にも色んな名前で呼ばれています。
- 紙挟み
- ペーパーホルダー
- クリップボード
- 板っパチ
- バインダー
- 板挟み
どれが正式というわけでもなく、場所場合によって異なる呼び名が使われています。ぷんぷく堂さん発売の「ミニッパチ」は板っパチが語源になっていそうですね。
利用者も多く非常に一般的な商品ですが、用箋ばさみは然る事ながらクリップボード下さ〜いとお越しになる方は稀です。
「状差し」


今回の主役は一つ目の写真、針がついた道具の方です。
二つ目の写真も全く同じ状差しと呼ばれているのがちょっと面白い!こちらは他にもタペストリー状の布にポケットがいくつも縫い付けてあるタイプもあります。手紙などを分類保管する道具です。
さて、名前を知らないこの尖った商品をお客さんはどうやって探しに来るのか。
この商品を求めて来店されたお客様は何十人もいました。その99%の方が同じ説明をされます。
「喫茶店でお勘定した後に、会計伝票を刺しておくやつください」
そう、これは注文票を会計後針の部分に突き刺して順番に保管しておくための道具なのです。飲食店用オーダー端末が普及していなかった時代、専門文具店の隠れた人気商品だったのです。
当然当時はインターネットコンテンツもアクセスツールも少ない時代ですから、どんなメーカーが製造していて、どんな所で販売されていて、いくらぐらいする物なのかも判らない環境です。お店に並べて、お客様が「喫茶店のお勘定で、、、」と問うのを待っていれば確実に売れていく商品でした。
まだたった10年ほどまえのお話です。
「数取器」
これは読み方も説明しないといけないませんね。「かずとりき」と読みます。
子供の頃触ってみたかった機械って、皆さんあると思います。私にとってはそのうちの一つがこれです。
幼かった頃の私は道端で交通量調査などをしている人々が使っているのを見ては、いつか触ってみたいと思っていました。ただ人によって見たことがあるシーンが異なるようで、同僚は学生時代実験中のカウントで使っていたそうです。
大人になり文具店に勤務し始めた私は閉店後、商品カタログをよく眺めていました。その中に扱い可能品目として掲載されていたのです。「これも文具店アイテムなのだ、、、」と気付いた運命的邂逅の瞬間でした。
番外編「くちがね」
これは商品ではありません。文具の部品です(写真の赤丸で囲んだ部分です)。文具店で修理依頼(メーカーによっては取り寄せ依頼)を頻繁にうける部品で「くちがね」という名前です。筆記具先端部の部品でコレがないと安定した筆記ができませんのでとても重要なパーツです。しかし、金属でできていることが多く、落としたりすると歪んで芯が正常に出てこなくなります。
修理に持ち込む際「くちがねの修理です」と言ってみましょう。文具店員から「できる!」と密かに思われるはずです。
「プロになる上で、ものの名前を覚えることはとても大事である」
むかし先輩にいわれた名言です。人も、物も、真剣に向き合うとき名前を呼んであげたいですね。
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