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“音づくり”へのこだわり/ムジカコーポレーション代表・眞壁氏対談 vol.3

MONOSWITCH信田とモノ業界のキーパーソンとの対談企画。オーディオメーカー/ムジカコーポレーション代表眞壁征生氏のインタビュー第3回は、眞壁氏がこだわる音とは?そのこだわりの音から生まれるムジカ製品についても話を伺った。

vol.1/世界を股にかける「ムジカ」の誕生

vol.2/眞壁氏とオーディオ&音楽との関係

レコードの音を基準とした、低音が響く“古い音”にこだわる

信田(以下、信)「オーディオメーカーさんには、そのメーカー独自の音があるように思いますが。昔で言うとヤマハの音とか、ラックスマンの音とか。ムジカさんの音って一言でいうとどんな音ですか?」

眞壁(以下、眞)「そうですね…、たぶん古臭い音ですね。今風の流行りの音っていうのは、例えば、iPodとかでヘッドホンで若い方が聴かれているような音。パイオニアさんとかソニーさんとかのメーカーさんは、そういう若い方をターゲットに音づくりをされると思うんですけど、ムジカの場合は、“レコードの音”を、ひとつの基準にしています。どちらかというと、低音がしっかり出ていて、高音域はそんなにうるさくなく。そういう音づくりなんですけど、これは今の流行りの音ではないですね」

「私はbeetsのヘッドホンなどの音作りがちょっと苦手です(笑)眞壁さんの、そういうポリシーというか、音づくりというか…、それは最初から揺るぎないものだったんですか?」

「そうですね。実は大手のソニーさんやパイオニアさんでも、エンジニアの方と話をしてみると、音決めの基準はレコードだという方は結構多いんです。CDで音を決めているのは海外メーカーも含めて少ないんですよ」。

「でも彼らは、レコードプレーヤーは作っていないですよね?でも、それを基にしてアンプの音を決めているんですか?」

「そうですね。レコードプレーヤーは、ものすごくリスクの大きい商品で…。機械なので保証という問題もありますし、少ロット生産というわけにはいかない部品も結構あるので、コストがすごくかかるんです。オーディオ業界では『レコードプレーヤーを手掛けると会社がつぶれる』と言われるぐらい、各社やりたがらないですね」

世界に一つの自分専用オーディオも、レトロモダンなムジカのデザインで

「ウチみたいな小さなメーカーの利点は、特注品やOEM商品をわりと簡単に作ることができること。向こうのハウスに、私の妻用のアンプがあるんです。真っ赤なやつ。赤がいいと言うので作ってみたんですが、そういうこともわりとできるんですよ。レコードプレーヤーの石の種類を選べたりもできます。どうせお金をかけるのなら、世界にひとつしかない自分専用のオーディオというものもアリなんじゃないかと思っています」

「例えば、床に置いているとペットが触ってしまうので、壁つけのスピーカーになど、住環境に合わせたオーディオの提案ができるといいですね」

「それと、ムジカ製品では音の質の良さはもちろんですが、見た目の美しさにもちょっとこだわっています。例えば、トップパネルにムーンストーンのように光るノルウェーの石(エメラルドパール)を使ったり。値段的にはわりと高めの石なんですけど、すごくきれいなので、トップパネルに使っているんです。このパネルも、普通にオーディオ屋さんが作ると、薄っぺらい板をガンとプレスして厚みが出るように見せるという技を使うんですが、ムジカでは本当にアルミニウムの塊から削りだして形にしているんです。製作も、戦車の中のコントロールパネルを作っている会社に頼んでいて、色もクリスタルブラックという特殊な黒でテカテカする。上質感にこだわったものなんです」

「こういうオーディオ機器は、なかなか少ないですよね?」

「スピーカースタンドなんかも、当然上にスピーカーを乗せるので、スピーカーケーブルが出てしまうんですが、後ろにケーブルをとめられるようにして、穴を空けて下に伸ばすことで、ケーブルがほとんど見えなくなります。なるべくインテリアの邪魔をせず、見た目もよく作りたいと、常に考えています」

「その辺の見た目のことは、ほかのオーディオメーカーさんはあまり気にされないところなんでしょうね」

「ムジカ製品は、そういう見た目のデザインも大事にしています。」

「デザインの参考にしているものとか、カッコ良さの発想はどこから?」

「それは、ここに並んでいる古いオーディオ製品たちからです。レトロモダンと言われますが、古い製品の中にある、自分たちから見ても新しいなと思うところを出していきたいと思っています。大昔の業務用アンプによく付いてた、横の取っ手とかも、あえて取りつけてみたり(笑)」

新製品開発は自身の発想から、HDMI採用で次代も切り拓く

「新製品開発は、どういうところから始まっていくんですか?出力数から決めて、回路を決めて、パーツを入れていくとか…」

「結構、ありがちな話なんですが、新製品は私が欲しい製品です。例えば、この『ククーロ』という小さいアンプのシリーズ。これはイタリア語で鳥の『カッコウ』を意味する言葉なんですが、この『ククーロ』のシリーズを18種類、出しているんです。全部が、ただのアンプではなく、周辺機器なんです。今のアンプはすごくシンプルになっているので、何かをやりたくても、何もさわるところがないんですが、そういう中でも、こんな機能があったらいいなと自分が思いつくものを、ひとつずつ商品にしています」

「以前から、パッシブアッテネーターは作られていましたよね。簡単にいうとパッシブアッテネーターというのは、どういう機能のものなんですか?」

「入力の切り替えと、音量の調整だけができるものです。この2つは特別な電源が必要ないので電源無しで使えるんですが、置く場所によってはノイズを拾ったり、ケーブルの長さが長くなると高域特性が落ちたりとか、ちょっと使い方にコツがいるので、どちらかというとオーディオ上級者が使うアイテムです。プリアンプも同じ機能ですが、プリアンプは電源がいるんです。わりと簡単に、ポンと置くだけでいい音が出るんですけど」

「プレーヤーのちょっとした動きによって発生する、微小なノイズも伝わらないようになるんですね」

「あとは、テレビやパソコンなんかもノイズを出していますので、そういったノイズが直接、音に影響を与えないようにしているということです」

「では、一般的にはプリメインアンプ1本でいいということですね?」 

「そうです。リビングでちょっと聴きたいとか、ベッドルームで機器を鳴らすということでしたら、プリメインアンプで十分ですね」

「入力はBluetoothで?」

「最近は、Bluetoothがすごくよくなりましたので、ムジカ製品もBluetoothでやっています。ただ、Bluetoothというのは、デジタルをアナログに変えるための手段のひとつで、電線がいらないよということなんですが、最近、HDMIという端子が出てきたんです。よくテレビの裏なんかにHDMI端子がついてますが、あれは映像と音声の両方を1本のケーブルで送りつつ、その中から音声だけを取り出して流すというもので、音がすごくいいんです。なので、HDMI端子を製品に取り入れはじめました」

「HDMI端子を使われたというのは、USB関連のDAコンバーターが進化していないからですか?」

「パソコンやスマホとオーディオをつなげるのは、ひと昔前はUSBでしたが、USBの進化が止まってしまって…。ICチップの新しいものが出てこないので、自分たちではなんともならないんです。ですから、何か代わるものがないかという探していたら、今、このHDMIがどのテレビにも使われるようになっていて、そのチップがたくさん出てきたんです。それで、HDMIを使ってみようと思いました。ただやっぱりデジタルなので、少しキラッとして甲高い感じの音がするんです。それを取るために、真空管を使っています」

「HDMIのDAコンバーターって、他社ではほとんど出ていないですよね?そんな、新しい試みも、眞壁さんの音へのこだわりがあってこそ、製品化できたんですね」

vol.4では、オーディオユーザーが幸せな音楽ライフを送るために、眞壁氏がおすすめするオーディオの買い方などを伺います。