消せるボールペンといえば?
消せるボールペンといえば、恐らく多くの人がパイロットが販売しているフリクションシリーズを思い出すのではないでしょうか。そしてきっと「消せるボールペンはフリクションが唯一無二だ」と思っているに違いない!!
違いますぞ、みなさま。
消せるボールペンに歴史有あり。そして無二ではないのです。
その名はファントム
消せるボールペンの歴史はちょっと長くなるので、フリクションが登場した2006年以降の出来事からはじめます。
発売当時私は入社したばかりの駆け出しバイヤーでしたが、初めて仕入れ商談でハンズオンしたときにはたいそう感動しました。発売後は飛ぶ鳥落とす勢いで成長したフリクションシリーズ。
そんな快進撃の中、2010年初めてのライバルが三菱鉛筆から登場します。
その名前はファントム。
綴りは怪人を表すPhantomではなく、Fanthom。
(商品2022年6月現在すでに廃番となっています)
KDMには2022年5月まで奇跡的に在庫が残されており、10年以上経過した今幻の実物レビューです。
まずお名前。なかなか素敵です。
勝手なイメージですが、消えるはずのないボールペン筆跡を魔法のように消す怪人、、、そんな感じではないかと(綴りは怪人ではないので妄想です)。
ルックスはとてもすっきりとしていて現代的です。国内では好まれそうな雰囲気。問題は書き心地と、筆跡が美しく消えるのかどうか。
結論からいうと10年以上前ということもあり、筆記具としてはまだまだ発展途上といった印象です。
キャップ全体が摩擦材(摩擦熱を生み出すための素材。以下便宜的に消しゴムと呼びます)になっていて、現在のノック式と同じようにペンチップと消しゴムを簡単にスイッチさせられます。
当時フリクションのキャップ式は摩擦材がペン本体の尾栓部分についていましたので、ペンの後ろにキャップをつけて書く人にとっては消すタイミングでキャップをとらなければならない不便さがありました。
この点を補ったのは素晴らしかったのですが、消しゴム素材が固くて消しづらい、色が薄いなどフリクションの後塵を拝しているのも仕方が無いのかなという仕上がりでした。
今回は新規導入の簡易顕微鏡で筆跡を比べてみることにしました。
第二のライバル「ユニボールR:E」
その後、パイロットと三菱鉛筆は訴訟と和解を繰り返し、後に三菱鉛筆から「ユニボールR:E」というファントム後継品が登場します。ノック機構が改良され、使い勝手の面では大きな躍進をします。
しかし2017年再び訴訟と和解(和解内容は非公開)を繰り返すという、ある種劇的な経緯をたどることになったのです。
一位と二位の差は果てしない
おそらく「ファントム」とか「R:E(アールイー)」という商品名を初めて聞いた方が多いと思います。
そのことは、現在の消せるボールペン市場の1位と2位の差を如実に表していると思うのです。
最初に新機能発明したメーカーがそのカテゴリーでシェアナンバーワンをとり続けることもありますが、市場の成長とともに順位が大きく変わることも同じぐらいよく起きます。
(修正テープを初めて作ったのはシードですが、現在シェアトップはトンボ鉛筆など)
現在消せるボールペン市場のシェア順位が入れ替わることはないように思えますが、10年後果たしてどうなっているのか。
定年退職する頃にこの文書を再び読んでみたいと思います。