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印鑑ケース/文房具屋として必要なモノゴト

文具「あれください」シリーズ。 文具店では日々たくさんの質問を頂きます。筆記具の替芯から修理、名入れなど多岐にわたります。 その中でもなかなかご期待に添えない葛藤をお話しするコーナー。

今日は印鑑ケースに関するおはなし。

人と人の接触が好まれなくなってからすでに1年が経過しました。その中でも、困ったアイテムとして扱われているのが印鑑。

なぜなら、書類の授受や捺印という物理的接触が発生するからです。

関連記事:シャチハタと印鑑は何が違う?

私のいくつかある苦手なお問い合わせの1つが印鑑ケースです。

ポストカード同様(関連記事:ポストカード/文房具屋として必要なモノゴト)品揃えに満足していただいたことがないからです。
毎回、問屋さんと打ち合わせで「やっぱり芳しくないので、品揃えを変えてみましょうか…」と新店舗設計の度にお話しするのですが何度変えても反応はいまいち。

この機会に社内で印鑑ケースの品揃えについてディスカッションしてみました。

私達が用意している印鑑ケースはこれらです。

1.朱肉一体型ハードケースⅠ

一般的に印鑑ケースというと、ゴツい蝶番とつまみがついたケースです。実は文具店ではこのタイプを置くことが多いのですが、売れ行きは本当に渋い感じです。

このタイプの良いところは、頑丈で印鑑の安全が確保されることと、内部に小さな朱肉がくっついているところです。
よく考えてみたらこのタイプは印鑑をつくるとオマケでもらえたり、容器がないと困るので一緒に購入するため、別途購入するのは壊れてしまった時だけです。
かなり乱暴に扱わなければ、そんなに頻繁に壊れるものではありません。なかなか買い換え購入してもらえないのも冷静になると納得してしまいます。

印鑑1印鑑2

2.朱肉一体型ハードケースⅡ

ハードタイプの朱肉と印鑑ケースが一体化したもので1の進化型です。朱肉が比較的大きめだったり、印鑑がポップアップ式になっていたり少し高機能になっています。特にマックスさんのSA-3004Sは印鑑マットまでセットされています(印鑑マットがあると、印影がとても美しくなります)。

エスパクトSA-3004S

3.ペンケース・ポーチ型

小型ペンケースのような形をしているタイプです。これは内部が広い構造ですので、9mm程度の印鑑であれば2,3本入るのが利点です。ただし、仕切りがあるわけではないので印面に残ったインクで少し持ち手部分が汚れてしまうという難点もあります。

印鑑3印鑑4

4.がま口型

ポーチ型の中で印鑑が踊ってしまう問題を解決したのががま口型。用途や機能は1のハードケースとほぼ同じです。ただ見た目はこちらのほうがかわいいですね。

印鑑5

文具こうもり問題

実は、この中で2朱肉一体型ハードケースⅡだけはとてもよく売れています。「なんとか期待に応えられてるじゃん!」と思われたでしょう。売れていれば、ご案内できない葛藤は生まれないはずですよね。

しかし、私はこの商品を印鑑ケースではなく朱肉のカテゴリーと思い込んでいて、朱肉コーナーへ配置していたのです。それ故、朱肉下さい!と言われたら喜び勇んでご用意し購入いただいておりました。しかし、印鑑ケース下さいと言われたときにこの商品は少々ズレた場所に陳列されており印鑑ケースとしては案内できていなかったのです。

形状だけみるとこれは完全に「朱肉がついた印鑑ケース」です。しかし、朱肉開発に長けたメーカーさんの商品だったので朱肉と同じコーナーに置いていました。品揃えではなくカテゴリー分けも葛藤の原因になっていたのです(文具業界にはこうしたAにもBにも分類できる商品がたくさんある)。

とはいえ、このエスパクト以外はやや低空飛行を続けております。お客様に満足してもらえる印鑑ケースはいったいどこにあるのでしょう。
探索の旅はまだまだ続きそうです。