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革を育てる

「革とはなんぞや」を追求する旅に出たKDM人。 そして姫路のタンナー、株式会社山陽さんを見学し、動物の皮膚が革として蘇る瞬間を目撃することになりました。 さて、今回連載第五回はこうしてできあがった革を育てるお話。

モノスイッチ記事で度々紹介してきた通り、革を長持ちさせるにはお手入れが必要です。

なぜ必要なのか色々調べてみましたが、理由は主に二つあるみたいです。

  • 徐々に乾燥する革への油分補填と保湿
  • シミや汚れの防止

工場見学後、山陽さんのご厚意でレザーソムリエ講師にインタビューすることが叶いました。折角の機会ですので、簡単なケア方法を教えていただきました。

革のお手入れ

革は休ませて!

革靴は履いたらまず休ませることが長持ちのコツ。
長時間革靴を履いて歩いた日は靴をたっぷり休ませてあげて下さい。

革は水に弱いというお話を聞いたことがあるかと思います。
靴は長時間履いていると内部はかなりしっとりしてきますよね。この水分をしっかり乾燥させてあげることで革のコンディションを整えます。

ここからは靴、革小物、鞄、すべての革製品共通のお手入れ方法です。

  1. ほこり取り
  2. クリーナーで拭く
  3. クリームで保湿
  4. 乾いた柔らかい布で磨く

まずは表面に付着しているホコリを取り除き、汚れや以前に塗布した保湿剤をクリーナーできれいにして、再びクリームで保湿するという手順ですね!

革は最終製品になった直後のピカピカ状態から徐々に乾燥してきます。
理由は油分が揮発したり、表面のほこりが油分を吸い取ってしまったり、色々あるようです。
そのため、革が乾燥してきたら保湿するというシンプルな手順で、クリームを塗り磨くのです。

もう一つレザーソムリエ講師からアドバイスです。

どんなクリームやクリーナーも必ず目立たない部位で試し塗りをします。
革というのは染料や顔料、そのほか防水加工など、様々な加工がされています。クリーナーとこれらの素材との相性が悪いとシミになってしまったり、防水効果が無くなってしまう場合もあります。

一般的によく言われるのが「クリームの塗りすぎは良くない。普段はホコリ取りとから拭きだけでOK。クリームは乾燥してきたら保湿」というポイントです。何事も過ぎたるは及ばざるが如しですね。化粧と同じで塗りすぎ注意です。

そして保湿クリームの塗り方について。

専用クリームを持っていない方は、「試し塗りでシミにならなければ、ニベア(ハンドクリーム)でも良いのですよ」と助言を頂きました。

身近な素材が使えないか試してみた!

今回モノスイッチでは「身の回りにある保湿剤」を革の保湿に使えるのか実験してみました。

用意した物

  • ヌメ革1枚(A4サイズ 色は白に近いベージュ)
  • ヌメ革1枚(A4サイズ 色は茶色)
  • 布2枚

試した素材

  • ハンドクリーム「ニベア」
  • ハンドクリーム「グリーンランド」
  • ハンドクリーム「モルトンブラウン」
  • ビーズワックス(ミツロウ)
  • ワセリン
  • オリーブオイル
  • ホホバオイル
  • リップクリーム「メンソレータム」

身の回りの保湿剤

実験方法

1.用意した布に準備した素材を染みこませ小さくカットしたヌメ革に塗布する

2.一晩室内で乾燥させる

3.翌日準備した布で拭く

実験結果

◎=よかったです! ○=悪くない △=オススメしない ×=やめた方が良い

素材 結果 モノスイッチオススメ度
ハンドクリーム「ニベア」 内部に浸透する感じがなく、クリームもあまり伸びません。 塗布直後はマットな感じですが、乾燥後に磨くとピカッと光ります。
ハンドクリーム「グリーンランド」 ニベアとほぼ同じ!
ハンドクリーム「モルトンブラウン」 ニベアに比べると伸びづらく、革全体に伸ばすのに少し時間がかかります。また、少しムラになりやすい気がします。
ビーズワックス(ミツロウ) 常温では固形ですが、クロスにつけて伸ばすと非常に柔らかくなりよく伸びます。しかし、ハンドクリーム類とは異なり革の内部へ瞬時に浸透するためムラになりやすいです。ツヤ感は良いですが、少々手に入りづらいのが難点です。
ワセリン 革に塗るととても良く伸びます。浸透力はやや強めですが、ビーズワックスに比べるとムラになりづらいです。ツヤ感は弱めです。
オリーブオイル あまり伸びません。しかし、浸透力は強めでビーズワックスと同じく瞬時にしみこむためムラになりやすいです。塗布後にしっかり磨くとツヤがとてもきれいです。
ホホバオイル 常温ではほぼ液体です。瞬時に浸透し、ムラになりやすいです。塗布後にしっかり磨くとツヤがとてもきれいです。べたつきも全くありません。
リップクリーム「メンソレータム」 内部への浸透はありませんが、ほぼ固形で非常に塗りづらいです。 ×

 

身近な保湿剤実験結果
※オイル、ワックス系のチームは革に浸透するようでわずかに色が濃くなっています

 

モノスイッチ独断の総合評価は、手軽なのはニベア、仕上がりのツヤが良いのはオリーブオイルとホホバオイル!
興味がある方は是非実験してみて下さいね(革との相性テストはくれぐれもお忘れ無く)。

 

株式会社山陽さん、新ブランド誕生!

ここでニュースです。
革の鞣しからケアまで本当に詳しく教えていただいたタンナー、株式会社山陽さんから新ブランドがローンチされました

TAANNERR(タァンネリル)

TAANNERRは革の良さがふんだんに詰め込まれた山陽さん肝いりの革製品ブランド。

株式会社山陽さんは、姫路で1900年代初頭から110年以上にわたり製革を続けている100年企業です。
山陽さんが今回自社ブランドをスタートさせたのは、企業としての2つの社会貢献を成し遂げるためです。

 

1.地域の活性化

実は姫路市在住の皆さんにも皮革生産が地場産業であるとあまり知られていません。
革は製品であるのと同時に素材で、更なる加工を経てユーザーが目にする「商品(靴や鞄)」となります。
ユーザーが目にするのは「商品」で、素材の生産地はあまり配慮されません。
こういった背景から「姫路は革の聖地である」と製品を通して発信し、地域振興を促すためのブランドがTAANNERRなのです。

2.製革を通してサステナブル社会を実現する

多くの人が牛や豚などを食します。その中で、皮は食品の製造過程において廃棄される部位です。
もしこの食肉生産から発生した皮をすべて廃棄した場合、年間東京スカイツリーの約6倍の重量となるそうです。
製革というのは、本来であれば廃棄される皮を革へアップサイクルするという行いなのです。
「革は現在課題となっている大量廃棄問題の中で、サステナブル素材として再評価に値すると啓蒙していくことを目的としています。

第一弾製品は工場見学で教えてもらった高品質素材ピットヌメ革で作られています。
特にビジネスバッグは内側もカーフという滑らかで繊細な感触のヌメ革が使われており、タンナーだからこそできる逸品です。
他にも財布やキーケースなど、長く大事に使いたくなる革製品が多数販売中です。

今回の連載で革に興味がわいてきた方、既に革製品ファンの方、是非是非ご覧下さいませ!

生命の環

モノスイッチの革を巡る冒険は、製品と素材の間をつなぐタンナーという存在に出会うことで完結しました。

殆ど革について知らなかった連載第一回の頃は、動物の皮を自分の持ち物として使うなんて私は残酷なのかな…と記事に取り上げることを逡巡する気持ちもありました。
しかし実際には革製品は、人間が生きる上で頂く命から発生する「命の一部」を革に鞣すことで再び命が宿り、製品となって私の元へ還ってきていたのです。

今晩は日頃お世話になっている靴や鞄、お気に入りの革製お菓子ケースを磨いて、生命の恩恵に感謝しながら眠りたいと思います。

プレゼント企画

山陽さんが読者の皆様へプレゼント「スプリットレザーコースター」をご用意してくださいました。

ご応募先着50名様にプレゼントさせていただきます(なくなり次第終了)。

ご希望の方は下記2つの登録をお願いいたします。

1.モノスイッチの会員登録
2.専用応募フォームの記入(応募フォームはこちら

ご応募お待ち申し上げております。

山陽さんの工場