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オーディオのある、幸せな音楽ライフを送るために/ムジカコーポレーション代表・眞壁氏対談 vol.4

MONOSWITCH信田とモノ業界のキーパーソンとの対談企画。オーディオメーカー/ムジカコーポレーション代表眞壁征生氏のインタビュー最終回は、幸せな音楽ライフを送るために、眞壁氏がおすすめするオーディオの買い方などを伺う。

vol.1/世界を股にかける「ムジカ」の誕生

vol.2/眞壁氏とオーディオ&音楽との関係

vol.3/“音づくり”へのこだわり

ミニコンポからスマホへ。オーディオの世界は、こう変わった!

信田(以下、信)「オーディオ業界って本当にさびしくなりましたよね。今は部屋にオーディオを置いている人もほとんどいませんし、うなったのは何が原因だったんでしょうか?」

眞壁(以下、眞)「私が感じているのは、仮にオーディオのピラミッドを考えたとして、昔は一番底辺に、ラジカセで聴いている人たちがいて、次にミニコンポ…」

「ミニコンポ!そうでした」

「…次にシステムコンポで、一番上に海外製品で聴いている人がいたんです。でも今は、一番下のラジカセが、スマホとかで音楽を聴く層に変わっていて、むしろ増えていて。このミニコンポのあたりが、スコンっと、なくなってしまっていると思うんです。上の層っていうは、あんまり変わっていないんですよ」

「確かにそうですね。僕らの周りに、ミニコンポを持っている人はいないですし、子どもからも、ミニコンポが欲しいなんて言われなかったですから…。上の層っていうのは、つまり、アンプとスピーカーの組み合わせを考えたりする世界の人ですね」

「そうです。総額でいうと100万円以上くらいのシステムを構築されているような人たちですね」

「今、スマホで気軽に聞けたり、買えたりするっていうのは、インターネットの影響ですね?」

「そうですね。ただ、フェラーリを買うときに、乗らずにネットで買うかというと、やっぱり乗ってみないとコワイですし、近くにちゃんとメンテナンスしてくれるところがないと乗れないと思うんです。オーディオもそうだと思うんです。このモデルハウスは店舗ではなくて、試聴スペースを開放しているというニュアンスなんですけど、いつでもお客様に来てもらって、聴いていただきたいと思っています。そういうスタイルのオーディオの販売店って、今は、ほぼないんですよ」

「10年前くらいだと、メーカーの販売員さんが大手の量販店に週末に応援に行っていたりもしましたよね?」

「大手の量販店さんですと、商品は並んでいるけど音は出ていなかったり、販売員さんに聞いても、電卓を持ってきて値段は出してくれますけど、内容はよくわからないということが多いですね。ソニーさんとか、パイオニアさんとか、ある程度の数を販売していかないと会社として成り立たないメーカーさん、例えばアンプを月に何千台は絶対売らないといけないというところは、今もそういうスタイルでやってみえますが…。ただ、今の時代はそれで売れるかというと、そこもビミョウですね」

「少し前までは、名古屋の電気街・大須にも、個人でやっているような中古のスピーカーと新品を一緒に売っているお店がけっこうありましたよね。あの辺も、もう消えてしまったんですかね」

「中古は特に、すごく売りにくい時代になっています。アンティーク家具としての魅力しかないんですよ。ツールとしてのオーディオ機器は、中古としての価値はほとんどないんです。例えば、10年前に100万円したスピーカーですって言っても、先月販売され始めた10万円のスピーカーの方が、はるかにいい音になっているので、だったら中古を買う必要はないじゃないですか」

「製品自体が古いものはヴィンテージではなく、単に“古臭いモノ”になってしまったとい うことですね。確かに買うところがなくなったな〜と感じます」

昔のオーディオに比べて、今のオーディオは小型軽量に進化

「やっぱり昔と比べると、いろいろと進化していると思うんですけど、ここ20年~30年くらいでは、どのように進化してきたんでしょうか?」

「まずは素材ですね。例えば、レコードプレーヤーなんかも、昔は大きくて重いものがいいという傾向でした。レコードプレーヤーというのは、振動を針で拾うものなので、それ自体が振動すると、音にひずみが出てしまったりするんですけど、それを無くすためにモノ自体の質量で振動を抑えこもうという考え方なんです。でも、今のプレーヤーに使われているモノは新素材でできていて、それ自体が振動しないんです。ですから、あえて重くする必要もないんですよ」

「今のオーディオって、意外と軽いですよね」

「あとは、使われている半導体とか真空管なんかもそうですけれど、増幅素子の進化ですね。昔は増幅をすると必ずノイズが出てしまったんですが、今はやりようによってはかなり減らすことができるようになりました。ほとんどノイズを無くす技術というのが確立されたので」

「それは、アナログ部品がどんどん進化してきたということですか?」

「部品の進化もありますし、小さくなったということもあります。大きな基盤に部品がいっぱい載っている状態というのは、それ自体がアンテナみたいなものですから、そこでノイズを拾ってしまうんです。それが、もし小さく、少量になれば、ノイズの量も少なくなるんです。今は、スマホなどの部品がどんどん小さくなっているので、そういうものをうまく使うと、小型でノイズの少ないものができるんです」

「新商品開発は、ご自身が欲しい商品とのことでしたが、僕らからすると、こうやって ちゃんとお話を伺うと、オーディオは未だに奥が深くて、とても魅力的な世界だという印象を受けます。ただ、それがなかなか伝わっていない現状もありますよね?」

「僕もずっとオーディオ好きだったので、ウチの店舗のオーディオは、少しでもいいものをと思って、導入しているんですが、お客さんで反応する人はほとんどいないんです。ですけれど、ウチでも微力ながら、何かお手伝いできることはないかとか、そこに届く仕掛けみたいなものを考えていきたいなと思っています。昔オーディオが好だったけど、ここ20年くらいオーディオの世界から離れていて、でも、今オーディオの世界をいろいろ調べてみると、なんかすごいのがあって、昔よりも全然廉価で、なおかついい音で聴けるようになったということが、伝わるといいなと思っています」

一番いいのは、まず音を聞いてもらうこと

「オーディオを買うということ自体、ハードルが高いものになってしまっている印象がありますが、眞壁さんから、こんなシステムでこう聞くと安くていい、幸せな音楽ライフが送れるよという、アドバイスがあれば、お聞きしたいです」

「私も今、月1回くらいはオーディオのことをラジオで話しています。毎週出て、もう13年経ちます。ただ、口で言われたり、書かれたものを見たりしても、オーディオの場合はその良さを伝えることが難しくて…。一番いいのは、やっぱり音を聴いていただくことだと思います。

「ムジカの場合は、月に1回イベントを行っています。ここで音を聴いていただいて、新製品を紹介するというベタなイベントもありますし、ちょっと今は新型コロナの関係でできていませんが、一番人気なのは、オーディオ居酒屋というイベントです。ここに15人くらい限定で集って夜に1杯飲みながら、例えば“好きなレコード”とか、何か1つテーマを決めてみんなでオーディオの話をするという…」

「楽しそうですね(笑)、でも、お酒が入るなら、みなさん車で来られないですよね?」

「寝袋を持ってきていただいて、ここで仮眠していただいて、お帰りいただくんです。それはもう毎年、お盆と年末は恒例のイベントになっていますよ」

「いつも来る方は、同じなんですか?」

「常連さんもみえますし、中には大阪や東京から来ていただける方もおみえになりますよ。オーディオって、ひとりで楽しむ暗い趣味というイメージがあるじゃないですか。でも、やっぱり、みなさん情報交換とかもしたいと思っているんです」

「オーディオのことをちゃんとお話ができる、メーカーの社長さんって、全国にたぶん眞壁さんしかいないんじゃないかって思いますね(笑)」

「ほかにも、大垣市に池の中にステージがあるソフトピアジャパンという施設があるんですが、その水上ステージで年に1回は無料のコンサートをやっています。ジャズとかテーマを決めて。去年はシティポップということで、大阪のバンドを呼んで聴いていただいたんですが、200人くらい集まりましたね。生の音を聴いていただくことはいいなと実感します」

「ここのモデルハウスみたいに、オーディオの音を聴くことができる、ショールームのようなものが増えていくといいですね」

「今後の僕のテーマは、自宅の音楽環境をどうやってグレードアップしていくか、いわゆるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)をあげることが一番やりたいことなんです。ウチは、文房具を扱っているので、道具でもって人生をもっとよくできないかということをテーマにしたいんですが、そういうときに、眞壁さんが今後考えていらっしゃることと、何か一致することもあるんじゃないかと思うんです。そういう面で何かメッセージをいただけますか?」

「私も文房具はすごく好きです。こだわる方はとことんこだわられて、そうじゃない方は百均のボールペンでOKっていう世界だと思うんですよ。でも何かのきっかけに、こだわった商品というのはこんなに面白いんだという発見があると、コロッと変わってしまう部分なのかなという気もしています。ですから、その発見のきっかけになるイベントなり、啓蒙活動なり、何かできればいいなと思います」

「中高生くらいを見ていると、男子は圧倒的にシャープペンシルなんです。メカニカル=シャープペンシルみたいなので、ちょっと重たくて高機能で、剛性が高くいものが好きで。女子はそういう方向ではなく、カラーペンの色でパステルカラーが似たような色でも10色あるとか。そういうのが好きですね。確か、色つきのペンを平均で18色持っているとう統計もあるみたいです。彼らもモノにこだわってますし、女性だったら自分が作るモノ、書くものの出来栄えに対してもこだわっています。ですからたぶん、そんな若者層に対しても、いろいろと訴えかけていくことで、心に響くこともあるんじゃないかと。オーディオも音楽も、まだまだすごくいけるな~って、ずっと思っています。今回の対談をきっかけに、これをテーマにして今後、連載企画としてもやっていきたいという話もしているので、今後も、ぜひご協力をいただけるとうれしいです」