前回の「かっぱ橋道具街を探索せよ」で、終日合羽橋商店街を歩きました。おかげで足の裏に水ぶくれが出来てしまったほどです(本当)。その合羽橋商店街の突き当たり、言問通りの交差点角に「和心堂二号店」という日本包丁専門店がありました。ショーウィンドウにギラギラと光る包丁に吸い寄せされてお店に入ると、店長の安達祝然さんが、ニコニコと対応してくださいました。気がつくと 1時間ずっと包丁のお話を伺うことができました。
包丁の手入れは水気を取るだけで十分
森川:包丁の素材って何で作られているのですか
安達:主には鋼(はがね)とステンレスです。鋼の包丁は一般家庭では扱いにくいかも知れません。
森川:錆びてしまうので、頻繁に研がないとダメということですか。
安達:包丁が錆びるというのは、使用後に拭かないと錆びます。綺麗に水気を拭いておけば錆びません。昔はステンレスの性能が悪くて、鋼に比べると、すぐに切れなくなると言われていた時代がありましたが、今はステンレスの性能が上がって鋼には負けないですね。同じグレードの包丁だとステンレスの方が若干高いですから。
今は全鋼の包丁は錆びてしまうと自分で研ぐのは難しく、研がないと切れ味は良くなりません、自分で研ぐのは難しくショップに出さないといけないですからね。
森川:錆びないようにする手入れって、どうすればよいですか。
安達:まず使い終わったら、乾いたタオルで水気を拭くこと。それだけです。何日か使わない日があるのであれば油を塗ると金属が酸化しにくくなるのでオススメです。油はサラダ油でもよいし、当店では椿油を使った専用の保存用油を利用しています。
日本の包丁の五大産地
森川:私、関西出身なんですが大学の近くに「堺」という街があって、そこは包丁の街だって聞いたのですけど、包丁って産地があるんですか?
安達:包丁には五大産地というのがありまして、まず「土佐(高知県)」、「三木(兵庫県)」「関(岐阜県)」「燕三条(新潟県)」、そして「堺(大阪府)」ですね。それと福井県の「武生」も産地として有名です。
森川:それは、もともと刀鍛冶が多くいた場所だったりするのですか。
安達:そうですね。刀鍛冶から派生したのは「三木」です。しかし明治時代のはじめに廃刀令が出てからは、刀職人が激減してしまい包丁作りにシフトしたようです。特に「三木」の場合は鎌が有名です。「燕三条」はステンレス包丁の技術を育て「研ぎ」と「鍛治」が丁寧と言われています。「堺」も「研ぎ」が丁寧で有名ですね。あと堺の包丁では、こちらの5本が「水本焼(みずほんやき)」と言われるものです。普通は鋼と軟鉄を合わせて鍛造したものですが、本焼は鋼だけで鍛造し、日本刀の材料と同じ「玉鋼(たまはがね)」で作られています。特に水本焼は焼きを入れる際に一気に水で冷やすので繊細な切れ味になります。
森川:すごいですね、値段もすごいけど(20万円越えでした)。
安達:水本焼は包丁職人の憧れで、かつ作るのが難しい。熟練の包丁職人でも何枚かは割ってしまうようです。日本刀はただ硬いだけだと折れやすくなってしまいます。そこで切れ味はすごいけど折れにくいという技術が水本焼なんです。すなわち日本の伝統技術のお値段だと思ってくださればよいと思います。
森川:この水本焼というのが、包丁の最高峰ってことですね。お値段もこれが一番高いのですか。
安達:そうですね。あと、こちらの包丁も素晴らしくて「料理の鉄人」の「道場六三郎」さんのモデルです。実際に道場さんが使われているものと同じなんです。この包丁は5本だけ作られたのですが、そのうちの2本が当店で販売させてもらっています。
研いだ包丁でトマトを切る動画を見せてもらった
森川:なんだかすごいお高い包丁ばかりかと思っていたのですが、平均すると全体に、それほど高価な包丁ではないように見えます。
安達:そうですね。当店に来られるお客様も最初は「すごく高いんじゃないか」と思われてご来店されるのですけどね(笑)。
森川:実は私、2年前に包丁職人さんから直接包丁を買ったのですが、その切れ味が凄すぎて(笑)。もう昔の包丁は使えなくなってしまいました。それまではホームセンターなどで安い包丁しか買ってこなかったので。その包丁が来てからは他の包丁は一切使わなくなってしまいました。それで、その包丁が切れなくなったらどうしたらいいですか?…とお聞きすると、